nikki_20230103「はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』」

 

版元ドットコムで1巻の書影がうまくダウンロードできなかったので4巻

 

アニメ見るの苦手なので読んだ。世間で流行っているもの自分の好きなものとのズレを感じることが多いのだけど、これもそんな感じだった。嫌いではなく楽しめたけど最高というほどでもなく、普通に面白いという感想になってしまう。アニメを見たら印象が変わるのかな。これがきらら作品のなかで突出して面白いのかなという疑問がある。原作の面白さというより、楽曲展開や後述する陰キャあるあるがアニメという媒体とうまく融合したからヒットしたのかなと思う。カプ名ばかり叫ばれていることへ逆張りしたい感情もありそうだけど、そこまで関係性に惹かれはしなかった。

 

題材としてはバンドをやる女子高生の成長物語であり、そこに現代のバンド事情やあるあるがプラスされ、より現代的なけいおんという趣がある。しかし、明らかに違うのはやはりタイトルで特筆される「ぼっち」というワードだろう。これでもかと陰キャという属性を強調してあるあるを詰め込むことで人気を獲得したのかなあと推察する。

 

後藤ひとりさんの人脈がどこまで広がっても「陰キャ」「陽キャ」のレッテルを剥がせずにいるのが印象的だった。自分から言わせれば「友達と旅行してる時点で陰キャを自称する資格ないだろ!」となるのだけど、結局そういうところなのだと思う。「陰キャ」「ぼっち」という属性は卑下のための語句に過ぎず、そこで資格が無いみたいなことを言い出すと永久にマイナス方向への不毛なマウント合戦が始まってしまう。どれだけ人と関わってもレッテルにこだわり続けているひとりさん、それを読む私たちとのズレ。それが「陰キャ」「陽キャ」というラベリングのしょうもなさを浮き彫りにしている感覚がある。

 

僕はそういうラベリングが本当に嫌いだから、勝手にひきつけて読んだ説もある。ギャグとして過剰に属性を強調しているところはあるだろうし、ひとりさんはだんだんと心を開いていく様子がある。それでも彼女は自分のことを「陰キャ」「ぼっち」、と言い聞かせ続けていることには変わりがない。書いていて思ったけど、この漫画を読んで心の底から楽しめなかった根源的な理由が「お前は陰キャを自称する資格がないからだろ!」という感情から来ているとしたら本当に僕は終わりかもしれない

 

そんなひとりさんの自虐は、まだギターというアイデンティティに自信を持てないゆえなのかなと想像した。「陰キャ」「ぼっち」というラベリングを自分につけることで自己防衛している、自虐をアイデンティティにしようとしている気もする。

 

 

@OfficialOken まだ正月「ぼっち・ざ・ろっく!」観る。コミュ障の高校生がバンドを始めるアニメ。もう共感しかない。わかるなぁバンドあるある。ひとりちゃんは自虐的性格が反転したらいいボーカルになるタイプかと。
#ぼっち・ざ・ろっく

 

これはアニメの感想だけど「自虐的性格が反転したらいいボーカルになる」はとても分かる。いつかアイデンティティとしての自虐が突き抜けて、それをギターとバンドに移してほしい。

 

あと「ギターヒーローとしての活動で結束バンドの人気を高めたくない」というスタンスは共感できて、そこに芯を通しているのはいいなと思った(上から目線)。そして「ギターヒーローではなく結束バンドとして自分を見てくれた」と彼女がやがて思っていくように、だんだんと現実に軸を移している感じがある。

 

前にコスメティック田中さんのコメント欄かで「人はいつか陰キャを卒業する」みたいな文言を見たのだけど、それはあるなと思って印象に残っている。決してキラキラするという意味ではなく、陰キャ陽キャという二元論から脱構築して自分を自分として認めていくような段階がいつかくる。それをもしかしたらこの漫画は描いているのかもしれないし、最終的にそういうところに落ち着いたらうれしい。

 

あとは細かい色々を書く。随所のバンドあるあるはリスナーとして分かるものもあったし、逆に演奏する側にはなったことがないので、なるほどと思いながら読めるところのバランスがよかった。バンドのMV、ジャケットパロディも2割くらいしか分からなかったけどよかった。あとこれはもうしょうがないけど、原作でレコーディングしてCDになる展開がわりと山場になっているので既にCDが実際に出てしまったのは勿体ない気もした。

 

5巻ラストの特別編、ヒステリーを起こした虹夏ちゃんを親身に心配していたようなお父さんが今は2人を放置してどうしているのか気になった。忙しく仕事をして、ある程度ふたりのライブハウスを支援しているのだろうか。あと8歳差の妹がいてあまり喧嘩をしない身として、12歳差でも喧嘩はあるんだなと思った。

 

原作を読んだだけではどんなタイプのバンドなのか一切の想像がつかなかった。ほかのバンドは端的に曲調が表現されていたのだけど、結束バンドはなにも分からなかった。さらに歌詞もどんなものなのか描写がなかった。そんな状態から初見で曲を聴くとたのしい。歌詞のセンスが高校生離れしているなと思いつつ、これを書いている。まだ原作ストックもありそうなので、2期3期と続くのかなと思ったりする。おしまい

 

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