喧騒が苦手で、かといって無音すぎて些細な声や音が目立つのも苦手で、もっぱらイヤホンをつけている。過剰に防衛することで必要以上に怖がっているという自覚もあり、外せそうなときは外している。今年に入ってAirPodsを導入してからのノイズキャンセル機能は大きかった。もともと使っていたウォークマンにも同じ機能がついていたので、衝撃と書くと誇張ではあり、想像してた通りの機能だったのだけど、思いのほか便利でするりと生活の一部に入り込んでしまったことへのおどろきがある。無線なのは勿論、音楽を特に鳴らさなくてもキャンセルしてくれる耳栓としての機能があるのが便利である。
話は逸れたけれど、それゆえ皆が寝静まる夜が好きだ。それでも無音は怖いのでイヤホンはなしで音楽をかけたりしている。特に寝る時はなにか流れてないとそわそわするので、スリープタイマーをかけて音楽を流すことが多い。人の話し声系はあまり試したことないけれど、どっちかというと音楽が好きなのでそっちにしている。サブスクに加入していなかった中学高校のころは無作為に好きな曲をかけていたものだが(そしてスリープタイマーをかけずに翌朝になっていても外れたイヤホンから音楽が流れて充電が切れかけていた)、スマホで曲を聴くことが増えてからは、そしてここ2-3年の自分の趣向もあいまって、寝るときに聴くアルバムが定まってきている。そのようなアルバムについて書く。
Rei Harakami『[lust]』
広島出身の電子音楽家である原神怜氏のエレクトロニカでは超有名な作品。初めてちゃんとそういうジャンルへ触れたのはこのアルバムだったはず。何回も聴いて枯山水みたいだなと思うようになった。氏の特徴である特定の機材を使った音色だけで、余白の多いサウンドが展開されている。ピアノ独奏とかに比べたらこれでもトラック数は多い方だけれど、それでも余白を感じるのはポリリズムのせいだろう。トラックごとに異なる拍子が重なることでそれぞれが際だって聴こえてくる。アンビエントにも言えることだけれど拍子を数えるのはほとんど難しい。
「long time」からその特徴は全開だけど直後の「joy」はアップテンポな方で拍子も分かりやすい。このあとの「lust」はディレイが心地よく、水面に波紋が広がる曲みたいだとずっと思っている。これは小さい頃ラジオでよくかかっていたbgmであることに10年越しくらいに気づいて嬉しかったのも思い出である。「greef&loss」は一番好きで、それは自分は跳ねているリズムが好きだからなのだけど、最初で跳ねていると思っていたらトラックが重なるごとにわけがわからなくなっていって、いつのまにか終わっているのが好き。3秒くらい無音を挟んで最後の音が鳴るのも可愛くていいですよね。だいたい寝ているから後半はあまり記憶にないのだけれど、どんどん深く潜っていくような展開なので寝るのにも合っていると思う。
青葉市子『qp』
クラシックギターの弾き語り。これは音楽家のyuigot氏が入眠用に聴いているというツイートを見てから聴いたのだけど、元ツイートが見つけられなかった。もともと青葉市子氏は好きでこれ以外のアルバムもどれも入眠に向いているのだけど、これは特にアップテンポな曲が少なくて向いているような、タイトルを見るだけでも羊を数えているような気持ちになりませんか。yuigot氏も同じことを言っていた気がするが、早々に眠ってしまうのでどの曲がいいとかあまり覚えていない。それだけひとまとまりで聴けるというか、トーンや世界が定まっているアルバムという気がする。
全曲聴いたわけではないけれど、『剃刀乙女』についている手描きの絵本とか、「IMPERIAL SMOKE TOWN」の変拍子とか、歌詞カードの筆跡とか、『NUUAMM』の「なつばくだんふゆだるま」はタイトルがキルミーベイベーのアニメサブタイみたいとか、同じく『w / ave』の「turn light」は素晴らしいのは勿論歌い分けが複雑ですごいなーとか色々思うことがある。「腸髪のサーカス」「奇跡はいつでも」「機械仕掛乃宇宙」「鬼ヶ島」「月の丘」「あまねき」とか好きです。彼女の単色ジャケットアルバムはちまちま中古のお店で見かけてるたび集めており、残るはこの『qp』だけになっているのだけどなかなか見かけないので、新品で買おうかなと迷っている。生きている間に生で見たい人のひとり。
入眠時のBGMが青葉市子→kara-lis coverdale→ブライアンイーノ→ジェイムスブレイクのアンビエント→Endel(AI生成のアンビエント)→キーボードのタイプ音ASMRというところまで来ていよいよ俺もそっち側の人間になったのかと思いました
— yuigot (@ygt_jpn) November 11, 2024
自分もこうなるのかな
Hiroshi Yoshimura『Green』
超有名作品2。海外からの評価が高くてTwitterやCD屋さんで見かけてぼんやり知っていたところ、逆に入眠用で調べて見つけたような記憶がある。うまく言えないものの、だんだん緑という色が音で鳴っているような気がしてくる。健康にいいプラシーボ効果すらありそう。ここまであげたアルバムに比べるとアンビエントみが強く、拍子とか関係なく音そのものが語り掛けてくる瞑想のようである。
冥丁『Komachi』『室礼』
原神氏と同じく広島にゆかりがあり日本文化をテーマにした曲を作っているひと。謡曲?のような歌声をサンプリングしたビートが特徴的な曲もありこちらは音mad的な興味としても楽しい一方でピアノと環境音のみの音楽もあり、そちらを入眠ではよく聴いている。夢の中でおぼろげに見た風景、映像でいうレンズフレアとかライトリーク、ちらちらと光る何かのような落ち着きがあって好き。Spotifyの人気曲も全て『Komachi』からで、みんな入眠で聴いてるのかなと思う。『室礼』はほとんどピアノの独奏4曲入り15分で仮眠に向いていておすすめ。
Lamp『一夜のペーソス』
バンド。2020年以降で彼らのゼロ年代の曲が海外から評価されて再燃する流れがあったと認識しており、私もその流れで知ったのだった。これは2023年リリースで現時点最新の1時間以上あるアルバム。よく聴いているわけではなく、夜行バスとかで2,3回聴いたくらいだと思う。タイトル通り夜にうとうとするには向いていて、バスで色んな町の景色が流れるような、喫茶店で夜通しほかの人の会話や食事が目と耳に入ってくるような、静けさと彩りがあるように思う。しょうみ全部同じ曲に、ひとつの長い曲に聴こえるくらいなのでどれが好きとかはあまり決められない。youtubeで海外でのライブ映像を見るとこの静かな曲で歓声があがるのか……という妙なギャップがあって面白かった。私が好きなほかのアーティストとしてさよならポニーテールがおり、海外ファンのサーバーに入って反応を眺めていると、人気の曲などからこの雰囲気はやはり好まれているのだなあとしみじみ分かる。
延近輝之『Sonorite』
これ以降はここ1年くらいで聴いた、Spotifyのおすすめで知ったものになる。5回も通して聴いていないようなものばかりではある。延近氏はテレビドラマの劇伴などを書いている音楽家で、これはわりと最初のほうのピアノソロアルバム。優しい音で夜の眠りというより、陽だまりでうとうとするようなアルバム。「bagatelle no.2」「petite etude」の不安定さが好き。ピアノ曲をあまり知らないまま、たまたまこれを見つけたので、これ以外にも聴くべきクラシック等のピアノ曲はたくさんあるのだと思う。
あと劇伴の作曲家というのもあまり触れられていない領域なので見つけていきたい。特定のアルバムには絞れないのだけれど、haruka nakumara氏も聴いてみることが多いです。牛尾憲輔氏のピアノも好きだが、映画のサントラだと起伏があってあまり入眠には向いていない。『リズと青い鳥』『きみの色』『僕の心のヤバいやつ』あたりのサントラを聴いて、よかったと思った記憶がある。
Chino Yoshio『Relax, Pt. 5』
Spotifyで「193193 For Marimba」が流れて来て知った。調べてもあまり素性が知れないが、こうしてよく分からないまま知った人も多いのだろうということを思った。サイン波メインの曲を作っている人で、オルゴールのような落ち着くアルペジオなどが特徴的である。サイン波だとikuranotane氏も最近聴いてよかった。
mei ehara『私をしも』
ギターの弾き語り。青葉氏もそうだけれどギターと歌声ってぶつかりあうようなイメージが個人的にあって、それぞれが際立つ弾き語りという形式において一体となって落ち着いて聴けるのはすごいことに感じられる。これも各曲の再生数がSpotifyで安定して多く、入眠用の人が多いのでは?と思っている。「ある喫茶」だけアコギではなかったりと音にもこだわりがあり、歌詞はあるけれど寝言みたいにぽつりぽつりと自然と聴き流せて、不思議とまどろんでいける。唯一「次回に」の「こんにちは さよなら」だけは口ずさんでしまう。5曲で30分にまとまっているコンパクトさも良い。これ以外のアルバムはまた曲調が違うので聴いていきたい。
羊毛とおはな『LIVE IN LIVING for Good Night』
羊毛とおはなも知って少しずつ聴いていたところ、ちょうど最近はNHK特集アニメ「cocoon~ある夏の少女たちより~」のエンディングにもなっていて、見られてはいない(原作読みたい)のだけれどおおと思った。「ずっと ずっと ずっと」素晴らしいです。ボーカルの方も亡くなって10年経つくらいには前になるけれど、楽器ひとつ声ひとつのシンプルな中に風のようなしなやかさと強さがあるのだと思う。これはしょうみ寝ながら流したことはないのだけれど、タイトル通り夜にアップテンポな曲を聴きたくない、というときに流すとしっくりくる。個人的に料理って深夜にやることで精神が落ち着く……みたいなところがあり、そういうときにこういうのを流すとおしゃれになった気分になれて、そういう良さもある。あとたぶん全曲カバーだから有名曲を知ることができてよい。