『超かぐや姫!』を見に行くついでに映画をはしごした。「「2025年にしたい100のことリスト」の振り返り記事が次になる予定」と前の記事に書いたのだけど撤回してそれらの感想を書きます。ちなみに映画は滅多に見ないしこの日見たのが今年初めてまともに触れた物語になった。
ジョエル・コーエン『ファーゴ』(1996)
・人しにすぎ映画その1。この日みた中で唯一の実写で洋画。評価が高いのとタイトルとあらすじは知っていた。サスペンスだけどコメディ要素もあるとのことで大丈夫だろうと思って見た。
・まとめると 主人公が妻を狂言誘拐してほしいと2人の男(AとBとする)に依頼▶︎誘拐できたがBが目撃者を3人殺す▶︎身代金の受け取りに主人公でなく妻の父がきたのでAが殺す▶︎受け取りをした駐車場で門番と揉めてAが殺す▶監禁した︎妻がうるさいのでBが殺す▶︎AとBで取り分を喧嘩してBがAを殺す▶並行して警官の捜査が描かれ、最後にBを捕まえて終わり
・殺人があって事態が二転三転するのでサスペンスではあるが謎解きや意外性はなく、ただ起こりそうな悪い事態が連鎖する。殺された側の悲しみだったりは描かれず、少なくとも嫌な気持ちにはならなくて、別に気持ち良くもないんだけど狂言誘拐しようという発端から終わってるから無の気持ちだった。出来事だけが描かれるような乾いた感覚。それゆえにいかにもダメそうな主人公が何も出来ずに手をこまねく様は滑稽ではある。
・並行して描かれる妊娠している女性刑事の捜査の描写は少し人間味があって、こちらも巻き込まれて死んでいたら嫌だったが、死ななかったので安心した。車でハンバーガー雑に食べたり、アメリカっぽいごはんの描写がよかった。演出だと犯人が人を殺してしまったときにデーンみたいな劇伴が鳴るのはこれこれ!という感じで面白かった。
・雪に覆われたアメリカの町が舞台で、真っ白な平原が頻繁に登場する。この舞台がより閉塞感やなんともいえない気持ちを強めている。このシチュエーションならば血が映えるのが定番だが、あまり描かれないなあと思っていたところにここぞとばかりに最後のシーンが来たのもよかった。
・最後のシーンで警官が山奥にいるBを見つけるのだけど、近づくと彼は外で死体を粉砕機にかけていた。粉砕機から噴き出たもので雪が濃い赤に染まっている。名前以外は史実に基づいて作られた映画なので、本当にあったんだろう。そうして彼は逃げ出すが警官に足を撃たれてあっさり捕まる。Bは寡黙だが目撃されたらすぐに殺したりやばそうな人物というのは最初から描写されているけれど、単にそれでは片付かない不気味さがあると思った。山奥で誘拐した妻とAを殺したとして、ひとりになって何がしたかったのか分からない。粉砕機で雪を血に染めるのも隠す気が全くないし、反撃する武器を持っていなかったのも気になる。
・勧善懲悪でもなく、ただただ人間ってなにをしでかすか分からないからこわいね、という映画なのかな。まともに洋画を見たのはたぶん3回目くらいで映画の評価軸みたいなのも分からず、こういうのが高く評価されているのかーまだ分からないことばかりだと思った。
𠮷原達矢『チェンソーマン レゼ篇』(2025)
・人しにすぎ映画その2。原作は第1部を3年前に読んでいたのでこの話もなんとなく覚えていたが、いざ見てみると何故デンジが狙われてるのかとか、悪魔って何で何故いるのかとかすっかり忘れていた。アニメも見ていない。でも物語はわかった。
・牛尾憲輔の音楽を劇場で聴けたのがデカいというのが一番の感想になると思う。あの繊細なピアノに低音やバキバキのビートが混ざってくるのかっこいい、こういう形で彼の音楽へ不穏さを混ぜられるんだなと
・全体の構成としては前半が静かで後半がバトルたっぷりで分かり易かった。結局は恋した相手が敵でしたという話ではある。レゼさんはなんで最後砂浜で2人の時に殺さなかったんだ? 好きだったからなのかな。彼女の過去も最後にさらっと言及されるのみで物足りなかったが、作中でも視聴者にとっても謎めいた存在ということなんだろう。造形からしてファム・ファタールという感じではある。みんなが上田麗奈氏を声優としてよく言及しているのがよくわかった。あとみんなの声も初めて聴いたのだけど、マキマさんは思っていたより声が高かった。天使の悪魔くらいの低い声だと思っていた。アキさんは声が低すぎて劇場で聴いても腹に響くレベルだったので怖かったし、でも死ぬんだよね……と思っていた。
・バトルに関しては原作を読んだときも何が起こっているか分からなかったけど、あの読み味をそのままやれてるのはすごいですね。漫画のコマをフラッシュ暗算で見せられてるみたいになるんだなと思った。絵は線が太い印象があり、リアルにぬるぬる動いてないのがあってるように思った。イラストレーターをよく見てるので、庄一さんはピクシブの高校生イラストから出てきた人かーと思った。
・夜の校舎でデンジが妄想する下着姿・レゼが襲撃されるバイオレンスが交互に映るのは自分が思ってるチェンソーマンだなあという演出でよかった。あとはレゼとキスをしたとき花火の音が美しい背景から意味を変えていく感じもかっこよかったな。マキマさんと映画をはしごして0時まで…って言ったとき自分のことかと思った(その日は0時まで映画を見たため)。
亀山陽平『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』(2026)
・短編3dアニメを1時間の尺で再構成した劇場版。なぜかわからないけど泣いてしまったので、たぶんこの4本の中では自分の中でもっとも評価が高いということになると思う。でも泣かせどころは特にないし、感想も特筆するところは多くない。この4本を見てこれで泣くのは変な気がする。疲れていたのもあるのかな。
・3ペアの6人が使われなくなった列車を更生ボランティアで掃除していたところ勝手に動き出したので止めようと奔走する話。まず列車を1両ずつたどって運転席まで向かうという構成が分かり易くてよい。初対面だったけどトラブルを対処するために協力して、最後は団結して黒幕に立ち向かうという分断の時代にシンプルなストーリーを見せられてなんか泣けたのだと思う。密室の会話劇は好きだし、最後にこれまでの要素を一気に回収してみんなで立ち向かうのにも弱いんだろうな。
・バッジだったりカップ麺だったりやたらリアルなCGがところどころあって、O.T.A.Mの人形とかそれによって不気味さが出ているのがよかった。あとみんな顔が強調されてるキャラデザだから複数人並ぶことでリズム感のある構図になっている画面が多くあって、それも楽しかった。
山下清悟『超かぐや姫!』(2026)
・オリジナルアニメ映画。配信限定から映画上映されたもの。
・楽しかったかも 面白いとかではなく 人も画面もずっとまぶしかった。見て数日経って、登場人物みんな楽しそうだったな、羨ましいと思えてきたしそれに尽きるかもしれない。ほかの感想でも見かけたが、花火大会でかぐやが述べた地球に対する感想に近いものがある。個人的には創作を見るならみんな楽しそうでいて欲しいし……。楽しい方がずっといいよ
・たくさん言われているけど一番のギミックについては驚きはして、それまで雑に感じていたところも全部包み込まれる感じがした。とはいえパッとは理解できなくて、今も完全には分かっていない。『君の名は。』みたいに(例が古いがこれしか思い当たらない)、これくらい考察の余地があると今も話題になるんだなと思った。
・私はどんなことも中立に立ちたがる癖があり、今回もかぐやが帰る月はいうほど悪いところなのかとちらっと思った。連れて帰るためにハッキングしたり手段の強引さとか、かぐやが魂が抜かれたみたいになってたのを見ると管理社会みたいによくないやり方で回っている世界なのかな。地球と話し合って解決したわけでもなく結局はかぐやが滅茶苦茶仕事を終わらせることで抜け出したのだと思うが、その先にあったのが8000年の壁というわけで、真の敵は宿命であり、それに抗うのがテーマなのはポスターのコピーからもわかる。そうして抗う手段として音楽であったりかぐやの身体を「創作」するということがあって、かぐやの側は8000年思い続けるということがあるのかな。この思い続けるということも尺としてはわりとすぐに説明されてしまうので、もう1回見ることでそこが強くなってくるのだろう。もう1回見て理解したいかと言われるとそこまでではないけれど
・音楽については……ryo(supercell)氏の楽曲は本当にこの映画で取り上げられているもの、あと「ブラック★ロックシューター」くらいしか知らなかったので、全体的に今こういう曲を作ってるのかと新鮮だった。「ワールドイズマイン」のGarageっぽい控えめアレンジがかっこよくてこれが一番好きだったかも。ライブで原作イラストと同じ構図になるところはやはり興奮した。「Ex-Otogibanashi」はサビが少し前のアニソンみがある?なぜか分からないけど、でもサウンドは現代っぽいし合いの手も入れやすいしでうまいなあと思いました。「メルト」のRemixが2020年周辺のサンクラリミックスみたいで、個人的にこれが一番ウケたと思う。なんでこの曲調でエンドロールに流れているのか分からなくて、みんなで静かに座ってこれを聴いている事実でよりじわじわきていた。これ調べたら1000万回再生されてるのもびっくりして、それならもっとアニリミとかみんな聴いてほしい。ライブシーンはアイドルものアニメのダンスシーンを意識しつつ、サイバー空間のグラフィックがすごすぎてあまり集中できなかった気もする。あと3人で踊ってるとPerfumeを連想した。「夢を見る島」をカバーしてるのも選曲がすごい。
・あとはいつものように細かいことばかり書きます
・最初の監督の名前がでてきて、タイトルコールするかと思ったらしないのよかった。
・最初の網戸の向こうにある月が網によって光の筋が出る感じわかるーと思った。
・オムライスとか粉と水のパンケーキ(小麦粉と水だと思う)って私もお金ないときよく作ってたから分かる
・タピオカラーメンが実際にあるツイートは見たけど、出てるのが本当に1秒あるかないかの一瞬でびっくりした。よく考えたらもとは配信だから一時停止し放題なのだなと思い至った。
・事前に見かけたがろんな氏(TSFが好きなので読んでいる)の絵は確かにずっと連想していた。海水浴のシーンの水着のかぐやの体型とか幼女っぽかった。あのシーンでいきなり蟹がたくさん出てくるのは何らかの異常なのかと思ったら、本当に都合のための演出っぽくてえーと思った。でもそのあともかぐやが家で蟹をつついていたり、意味があるのかよくわからなかった。
・戦闘シーンはルールと戦略・アクション・兄の正体が混線して1回では理解しきれず、ゲームの舞台がローポリな感じなのは今っぽいと思った。
・家族との確執はよくわからなかった。お母さんが意固地だったということ?
・最後にヤチヨと再会したときのプンプンしたいろはの動きよかった。
・最終的にいろはがかぐやの素体を作ったのは愛が重いと思った。でも再び会う手段ってそれしかないのか。
・いろはの同級生の諌山真実さん可愛かった。結局私はこういうふわふわしたキャラが好きなのでしょう。卒業してショートカットになってたのは寂しかったな。
・かぐやが料理に凝りだすの、宇宙人が地球の食べ物に興味を示すのは分かるけれど、料理という行為にはまるのはなんか現実的だと思った。当人にとっては実験してるみたいな気持ちなんだろうし、やはり料理するって人間ならではの営みだ。あといろはさんが曲を作るときに生活が不健康になっていたのはやめたほうがいいと思った。
特典はもちろんなかった