nikki_20230714「宮崎駿『君たちはどう生きるか』(2023年)」

 


見ました。ジブリは「風立ちぬ」「コクリコ坂から」「借りぐらしのアリエッティ」しか見たことなし。そのほかは金曜ロードショーでリビングで流れていたのを横目で見ていたのみ。最速感想みたいなことはしたくないけど、なるはやで見た方が純粋にみられると思ったし、感想も書きつけておきたいので書きます。別にすずめの戸締まりは一番に見るとかしなかったのにこれは朝一番に見に行ったのは戦略に乗せられたみたいでちょっと悔しい。でも実際こういうのは「一番に見る」という価値を自分からつけに行って動機にするくらいじゃないと見ないんだろうし、みそきんもそうだったけど、なんだかんだ自分で体験したほうがすっきりするにはする、というのをだんだん分かりつつある。

 

映画をあまり見ないし耐性が自分にないのだと思うけど、前情報なしで映画を観るのってわりと心臓に悪いのだと思った。予告編というものの偉大さを実感した次第。下敷きになった小説(以下「吉野源三郎の小説」とする)はあくまで意識した、という話だったので中身は分からなかったし、冒頭のサイレンから戦時中の話だなと思ったので、いつそういう死体など目を背けたくなるものが出てくるか、かなりビクビクしながら見ていた。ちなみに火災の中を書けていくシーンは迫力があってよかった。どんなシーン・展開かぜんぜん分からないという負荷に自分は弱いらしい。しょうみ見る一日前くらいからミステリーツアーに連れていかれるみたいな気持ちでずっと怖かった。でもそんな体験ってあまりできないので総じて良かったです。

 

肝心の中身については老若男女たのしめる一番王道な物語をやっていると思った。幼いころのお母さんに会ったりするのとか、世界の命運を委ねられたり。世界は閉じていて、たとえば学校でいじめられて自分で頭を殴るところとか大胆に早送りみたいになっていたのも印象的で、正直吉野源三郎の小説では学校が出てくるので、おお、と思っていたらぜんぜん描かれなかったのだった。眞人さん個人の話であり、その選択が世界の命運を左右して(血のつながっていない)母親と元の世界に戻るのを選んだりするのは、セカイ系っぽさもありそうだと思う。

 

結末はけっこう急で、世界が崩れて終わってしまった。夏子さんがなんで塔に行ったのか、そのまま戻りたくないと言ったり、激昂したりした理由も把握できていなくて、解釈は定まっていない。というか血のつながっていない母親*1が主人公に対して激昂する、というのはすずめの戸締まりでも見た。結末についても、ファンタジー界の出来事が現実のバランスを崩したというので戦争に結びついたらどうしよう、すずめの戸締まりっぽいなと思っていたけど、そうはならなかった。ただあの世界が崩壊したのは事実で、結局現実は醜いものになってしまったのだと思う。そのなかで「君たちはどう生きるか」ってことなのかな

 

 眞人さんがこの出来事を結局は忘れていく、ということも最後には示唆されており、子供のイノセンスさというのも印象に残った。小さい頃は神様がいて、みたいな神様に触れるのを誰しもが経験している。だけど忘れていくことを描いていて、その神様というのに世界の残酷さがあてがわれたのかなと思った。

 

登場するシチュー?やパンなどの食べ物はちゃんとおいしそうだし、あとシベリア(風立ちぬで登場した)っぽいお菓子が最初のほうで出てきてた気がする。大量の生き物が押し寄せてくるシーンが何回もあったのも印象的だった。全体的に鳥がモチーフなのは、やはり空を飛ぶことへのこだわりなのだと思う。ちいかわみたいなのもいた。たとえば青い空と白い雲は風立ちぬっぽかったり、屋敷や図書館など、そういう過去作とかの総決算感もあった(過去作をあまり見てないけど)。

 

EDが米津玄師なのはまあ察していたのだけど、食傷気味に感じた。しかしクレジットに声優としてあいみょんが出てきたときに劇場の雰囲気がざわついた気がして、ちょっと面白かった。映画館はほぼ満員で、終わったときみんなが一斉に立ち上がる光景は壮観で久しぶりに見た。周りの感想が怖くてイヤホンで耳をふさいでいたが、たくさんの人がいるのにほぼ無言だった。それもよかった。

 

*1:20230717付記 夏子は主人公の母親の姉妹であるため血はつながってました