nikki_20230305「カネコアヤノ『カネコアヤノ ⼤阪城ホールワンマンショー 2023』」

 

kanekoayano.net

 

「カネコアヤノ ⼤阪城ホールワンマンショー 2023」に行った。結果として現時点における今年の最も衝撃的な体験になった。まず音楽のライブに行った経験が浅いので大阪城ホールもカネコアヤノのライブも初めてだった。彼女の歌を聴き始めたのはTwitter経由で知った2020~2021年くらいだったと記憶していて、やさしい音色が聴けるのだろうという予想だった。それは1曲目「わたしたちへ」のイントロから裏切られて、鳴っていたのはバンドサウンドによる轟音のような音楽だった。新しく出たアルバム「タオルケットは穏やかな」は、これまでとは少し異なってノイズの乗ったギターが多用されていることを思い出して、そのイントロからライブのあいだ涙がほぼずっと出ていた。なんのコードが鳴っているかすらも分からないような歪みとリバーブ・ディレイの乗ったギターが身体に響いてくるほどに鳴らされる、私はそういう音が好きなんだと否が応でも分からされた。1曲目に限らず「愛のままを」「退屈な日々にさようならを」などの曲も同じような音が鳴っていて、なにも今回のアルバムで大きく変わったのではない、元から彼女の中にあった音楽なのだということを考えていた。「春」のバンドアレンジが聴けたこと、最後に初期の方の「退屈な日々にさようならを」から「タオルケットは穏やかな」へ繋げて終わるのもよかったです。

 

思うに彼女の楽曲たちには「強かさ」がある。「強い」というよりも「強か」という言葉が似合っていて、生活と世界を一旦受け止めたようでいて「でも私はこう生きる」という芯を通してくるような、抵抗していく姿勢を感じている。柔よく剛を制す、という言葉をライブ中に連想していた。

 

彼女のこれまでのライブは知らないが、今回はほぼ2時間通しでMCもないライブだった(最後に気をつけて帰ってねとは言っていた)。それもかっこよかった。ずっと思っていたのはその人気で、彼女はこんなホールを満たせるほどなのかという衝撃があった。私の中で彼女はもっとニッチな音楽のつもりだったのだけど、どうやらそうではないのかもしれない。会場前の人だかりや客席を見てそういうことをずっと思っていたが、大阪城ホールがほぼ最大規模ということを後で知って納得した。ひとりの人間がこれほど大きなホールで人を沸かしていることへの感動があった。そこに立っている彼女にも背負うものがあり、それでも歌っているのは個人の生活の話だという事実も琴線に触れるものがあった。本当によかったです。