nikki_20221021「(語彙力)」

 

 

@arudanshi 難しい言葉が歌詞にたくさん出てくると語彙力が高いと評価する人々

 

数日前にこんなツイートをしていたのだけど、ボカロのコメント欄などで言われている「語彙力」という言葉に感じる自分の違和感というものがある。椎乃味醂氏とかツミキ氏あたりがパッと思いつくところで、語彙力云々言われてるけど別にそうでもないと思う。

 

youtu.be

 

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これは彼らがつまらないという批判ではない。そもそも語彙力とは何か、という話になったとき、純粋に用いる語句の多さ・普段使わない言葉を使っているのが語彙力ならば確かにこれらの楽曲の語彙力はあることになるだろう。しかし単に難しい言葉や多様な言葉を用いればそれでいいのか、というとそうでもないと私は考える。ここがズレを感じる箇所なのだと思う。

 

実際に「語彙力」とweblio辞書で調べると以下のように出てくる。たくさんの語句を知っているだけでなく、どれだけ言葉を使いこなせるかも意味しているという。知っている言葉を適切に使いこなすことも語彙力の一部である。

 

語彙力(ごいりょく)とは、「どれだけ多くの言葉を知っているか」および「どれだけ言葉を使いこなせるか」に関する能力、を意味する表現。単語の知識ならびに運用能力。主に「語彙力がある」「語彙力が低い」「語彙力を上げたい」「語彙力アップ」といった言い回しで用いられる。

 

しかし最初に述べた「語彙力」の用法は単に難しい言葉を多用していることの形容でしかないと感じる。結局は難しい言葉をたくさん使っているのがもてはやされる現状に対する嫌さ、という過去に述べたことの反復にはなる。安易な言葉で心に響く方が好きである。

 

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さらに、そこにある「うまく使いこなせているか」は、実際に歌詞の語る意味を理解しないと測れない。では、歌詞の意味とその語句の使用方法まで吟味して語彙力を称賛している人はどのくらいいるだろうか。単に難しい言葉に大して考えることを諦めて、「語彙力」と手放しに褒めているのではと思ったりする。

 

ツミキ氏や椎乃味醂氏は語彙力があるというよりも、自分の伝えたいことた世界観の演出に合わせた言葉の使い方・表記方法がしっかりと確立しているといったほうがしっくりくる。単に語彙力という単語への逆張りかもしれないけど。

 

特に後者の椎乃味醂氏についてはわりと哲学者の思想が引き合いに出されるのだけど、それらは単に氏の伝えたいことを最も直接的に伝えようとした結果がその思想や著書の文言の引用になったのであってそれらを「語彙力」と評するのは安直だと感じる。かくいう私もその思想についてよく分かっていないのだけど、下記なんかはそれっぽいことが解説してあった

 

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一方でもうひとつ頻繁にみられる語彙力の用法として「ーがなくて…」や、さらに略された果てには「(語彙力)」という表記のみでそれがないことを表していたりする。これは「どれだけ多くの言葉を知っているか」および「どれだけ言葉を使いこなせるか」という文脈に沿った使い方だと思う。ただ謙遜の文化が苦手な私にとってはやはり好かない常套句だし、単に自分の表現が言葉足らずで何かを傷つけたりしたときのための予防線になっている現状も納得はできない。おやすみなさい。