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本題に全く関係ない(といいつつなんとなく描いたつもりが桜が関連していた)絵です。

 

テアトル梅田という大阪の映画館が9月末で閉館するため「さよなら興行『テアトル梅田を彩った映画たち』」をやっている。4本の映画を立て続けで見てきた。「一般・シニア 1,000円 / 株主提示割・TCG会員・学生 800円」という価格からも見ないわけにはいかない。ということではじめて訪れたところ、こぢんまりとしながらもよい雰囲気の映画館だった。たまに訪れる茶屋町の大きなジュンク堂の近くにあり、なんとなく劇場があるなとは思っていたのだけどここだとは思わなかった。

 

見たものの感想をメモ的にまとめます。ネタバレはします。

 

 

 

 

 

秒速5センチメートル

新海誠監督の映画。高校のときになんとなく家で見て以来、2度目の視聴になる。この作品は「エモい」「感傷マゾ」などの文脈で近年よく引き合いに出される印象がある。いま思えば流れが来る前に見ることで先入観を廃せていたことになり、よかったのだと感じた。「想い出は遠くの日々」が流れた途端に「うわ~エモいやつだ」みたいに俯瞰してしまう自分が出てきて嫌だった。

 

先入観として「遠野貴樹」という人物がわりとそういう文脈でいじられたり、ひとりでうじうじしているだけの映画で気分が悪いなどとボコボコに言われていた印象があったのだけど、今回見てみて「お前ら馬鹿にできるのかよ」みたいな気持ちになってしまった。「桜花抄」でひとりで駅のホームでポケットに手を突っ込んでいるきざな感じに苛立ちかけたり、「コスモナウト」で自分のことを想っている澄田さんに対して何も打ち明けずにいるのは鈍感ではみたいな気持ちはあった。澄田さんはいわゆる負けヒロイン的な立ち位置なのかもしれないけど、一途さがよかったので彼女の未来に幸あれと思ってしまった。

 

それでも彼がひとりで未練がましく何もしなかったことだけが悪いのではない、距離というものが関係を変質させてしまうところってやっぱりあるんじゃないでしょうか。そもそも恋愛に良い悪いとかあるのか分かりませんが……。この作品が距離を題材にしていることは有名だし英題からも明らかで、そういう距離と時間が変えてしまうやるせなさのほうが今回は印象に残ったな。じゃあどうすればよかったんだという気持ちでいっぱいになる。

 

個人的に印象に残った場面として、「コスモナウト」で彼に対して「優しくしないで」と澄田さんが言い放つところがあった。自分もお人よしだとか優しすぎるということをよく言われるので、このときの思わせぶりな態度をとる彼に対してどうこう言う権利はない気がする。でもこの感想自体も登場人物に寄り添いすぎの、「優しすぎる」ものなのかもしれない……。あと終盤の「ただ、生活をしているだけで、悲しみはそこここに積もる」という台詞もはじめて見たときからすき。

 

あと篠原明里の「1000回もメールをやりとりして…」という有名な文面も今見たらかなり辛辣だなと思ってしまった。もうちょっと言い方があるというか、気取りすぎではないでしょうか。

 

 

 

 

 

パプリカ

今敏監督のアニメ映画。完全初見で見た。面白かった。博士が発狂して平沢進の「パレード」が流れるくらいのyoutube的付け焼き刃の知識しかなかったのだけど、平沢進は全編にわたって音楽を担当していたし、「パレード」は何回も流れるし、博士は開始してすぐに発狂するのでなるほど~と思いながら見ていた。あと知っていたけれど筒井康隆が原作だったのも思い出した。平沢進筒井康隆というのはそういう層のオタクにとってはかなりテンションのあがる組み合わせな気がする。

 

傑作と言われている印象があり、何がそれたらしめているのだろうと楽しみにしながら見ていた。やはり映像だと思う。モーフ変形やイメージの転換、夢の中は鮮やかな色彩でありながら現実と同じ筆致で描かれるゆえにシームレスに夢と現実がつながる感じでよかったです。おなじシーンを何度も繰り返しつつ意味が変質していく演出すき。

 

オタクはメタフィクションが好きなので、そういう演出がところどころあって熱かった。イマジナリーラインという映画の撮影用語を実際に実演して見せたり、ずっと見ていた画面が実は映画のスクリーンに投影されたものだと解ったり。

 

話の中身については、最後がよくわからなかった。登場人物の名前を確認したりしたい。あとふつうにパプリカが可愛かった。クールな感じの女性がいっぽうでは魅惑的な女性を演じているのはみんな好きなのでは。エンドロールで声優が林原めぐみさんだと分かり、この人かと納得していた。

 

 

 

 

 

コーヒー&シガレッツ

ジム・ジャームッシュ監督の映画。珈琲と煙草を挟んだ会話というテーマのもと、短篇映画がオムニバスで綴られていく。群像劇が好きなのでずっと最高だった。ちょっとだけ同じセリフが使われて繋がっていたりするのも性癖なのでよかった。次で述べるのだけどいちど同監督の「ナイト・オン・ザ・プラネット」を見たことがあったため、これも見ることにした次第だった。

 

ナイト…のほうは長めの話が5つあってオチがついたり悲喜こもごもなのに対し、こちらは短めな11の話が展開される。特にオチのないような何気ない会話から、少し長くオチのあるもの、人生の悲哀を感じるものなどが様々で、こちらのほうが個人的には好みかもしれない。個人的には「いとこ同士」(COUSINS)が好きだった。何気ない会話や仕草から描かれない余白にあるそれぞれの背景や心情がじわじわ読み取れていく感じがよい。最後に片方が去ってからここでは煙草が吸えないと言われるシーンとか、従姉妹と自分の差を実感しているのが読み取れてよかった。

 

机を真上から撮影して、コーヒーカップや煙草などの品物がリズム感のある配置になっているというカットが多用される。これはいろんな作品で見る構図な気がするけど、やはり軽妙でいいですね~。モノクロというのもあり、いちいちお洒落だった。そういう例について、響けユーフォニアム2期9話について過去にこう書いていた。

 

上から見下ろした机のクッキーとお茶の配置、そのアンバランスさを示すなどの表現がよい

nikki_20220526「響けユーフォニアム2期、劇場版を見ました」 - 遺失物取扱所

 

 

 

 

 

ナイト・オン・ザ・プラネット

isitsutbustu-todoke.hatenablog.com

 

かっこわるい題をつけていますが過去の日記で感想を書いています。見たのは2回目。正直4本立て続けに見たラストで、あまり集中力がなかった(眠くはならなかったのが奇跡だと思う)。もう一度見ることで大きな伏線に気づくみたいな謎解きや冒険系の映画ではないので、やはりしみじみいいなあと噛みしめるばかりだった。あとぼーっと見るのはいい雰囲気の作品ではある。

 

エンドロールでジプシージャズが流れつつ知らない英語の名前が通り過ぎるのをぼーっと見つめているとき、これもまたひとつの夜の過ごし方なんだな、と劇場の雰囲気も相まってじんわり感動した。閉館間際の映画館でみんなが客席に座ってエンドロールを見ている夜、ということがなんとなく映画のテーマと重なってよかった。

 

 

 

 

 

今回みたものはすべて満席で、まあ最初の2つは分かるのだけどジム・ジャームッシュ監督の作品も支持されているのだなあと分かってよかったな。あまり映画は見ないけどストーリーがいいとかよりも、いちいちカットが芸術的とかそういうのに魅力を感じるのかもなあと思い始めている。おやすみなさい。