nikki_20240909「山田尚子『きみの色』(2024年)」

 

 

山田尚子監督作品はいくつか2020年以降に触れて結構影響を受けたため、期待や不安を感じながら見に行った。見る前に思っていたのはバンドアニメが流行っている今において再び音楽ものをやることに対する期待、あと自分が監督作品へ求めているのは少女性というか細かい仕草などの描写なのかもと思っていた。見てから時間が経ってしまった。パンフレットは未読で、自分でまとめるまで他の人の感想を読まないようにしていたから言われ尽くしていることばかりだろうけど、箇条書きで断片的に書く。

 

・期待していた仕草や細かい描写は健在で結構好きだった。全体的に淡い色味なのも好き。水色の制服と木造の校舎とか好きだと思ったけど、よく考えたら劇場版けいおんedのイメージが個人的に好きなのがありそう。回転とか同ポジのリズミカルな場面転換も健在?でよかった。

 

・テーマゆえに色が強調されていたけど、最初の方とか周りの話し声など日常の音も強調されていると感じた。だから全体的に感覚が過敏な人の世界を体験しているようだった。音楽ものだと思っていたけれど、これは色を通して音を描く、または逆の色と音の関係の映画っぽい。そういう切り口なんだと面白かった。文化祭のライブシーンは結構派手に色のイメージが展開すると思っていたが、思ったより控えめで音と演奏シーンメインで印象的だった。やっぱり演奏描写へのこだわりがあるんだろうか。

 

・日常の音が強調されていて、それが心情ともリンクしてくる。教室で惑星の動きを見ているときのナレーションがトツ子の中に入り込んできたり、電車か何かのゴーっという音が使われていたシーンもあった気がする。音の過剰さに対して聖堂の静けさはそれに対比されていると思った。トツ子が何かに悩んだりするたびに逃げ込んで落ち着く場所であるのが聖堂だったけど、空間のトーンが青緑で、きみとルイの青と緑(どちらかというと青が強い?)っぽいのも意味深だと思った。最終的にバンドが居場所になることと重なるようにも思う。

 

・花のモチーフが多いのも気になった。学校や寮の中庭にある本当の花もだし、折り紙で作った花やきみの家のドライフラワーなど。そもそも一番最初のシーンが聖堂の床にある赤い花で、これはトツ子の色を示唆しているのかもしれない。しかし色テーマだと用いられる全ての色に意味を見出してしまうようでよくないとも思う。

 

・結局トツ子の色は赤であることが終盤のダンスシーン(ここ好きだった)でわかる。トツ子だけ瞳の色が赤っぽいし、きみとルイの瞳も青緑色だったためトツ子自身の色は赤なのかも、と見ながら思っていたら本当にそうだったのでそうなんかい!となってしまった。トツ子は鏡とか見て瞳が赤いから赤かも、みたいに思わなかったのか気になるが、別に他の生徒たちは瞳の色=個人の色というわけでもなさそうだし(同室の三人を森っぽいと言っていたりしたので)野暮な考えかもしれない。しかしよく見るとポスターからも赤であることは明示されていたし、光の三原色という見方もできるのでなんというかそこまでトツ子自身の色はサプライズ要素でもないのかもと思う。しろねこ堂も三原色を混ぜるからなのか~ 猫に導かれるというきっかけはそこだけファンタジーっぽくてちょっと可笑しかった。

 

・ラストシーンの解釈ができていない。ed前の青空とテープ、ed後のトツ子がきみの手をとるシーン。後者について考えてみるとトツ子は修学旅行を蹴ってまできみを守りたかったということに思い至り、描かれてはいないがきみがルイに惹かれることは寂しさもあったのかもしれない。トツ子は実は結構強い思いを寄せているのかな、と信頼できない語り手みたいに思えてきた。タイトルが「きみの色」であることからしても結構強い矢印があるように見えるけれど、一方でスノードームを買う場面できみから虹色を感じるところは結構肯定的に描かれていたようにも思う。「わたしが惹かれるのはーー」というキャッチコピーからも三人の関係が重要なんだろうか。

 

・個人的にそんなに関係性への強い興味が無いのでそこまで深刻には考えておらず、トツ子が自分の色を見つけるまでの成長譚なのだと思う。

 

・舞台がミッションスクールであることもあって全体的にそんな感じの雰囲気があった。きみを寮に呼ぶシーンの規則を破る緊張感や、罰せられることで物語が動いたり、その反省文が曲になることとか。反省文が一日一枚?みたいに言っていた気がするけど結構重い。あと嘘をつくことは悪いことである、という価値観が結構大事なものとして描かれていて、そんなに悪いことか?みたいに思ってしまった。寮に友達を呼ぶのもちょっとした若気の至りだし、きみが祖母に打ち明けられないのも自然なことではみたいな……。キリスト教のことを良く知らないのだけど、キリストの最期的に裏切りは特に悪いこととされていて、学校では特に強く教えられるのかな。終盤のろうそくを灯して秘密を打ち明け合うのもそういう儀式みたいで、そこからすぐにきみとルイが親へ問題を打ち明けて解決するのはなんというか分かりやすいなという感想を抱いた。

 

・終盤のダンスシーンが好きだと前に書いたけど、細かい仕草の生き生きした感じが好きなのかもしれない。あのシーンでは伴奏があるけど実際は何も鳴ってない中で踊っていると思うとすごく、もちろん脳内で鳴っているのだろうけど、そうして脳内bgmで踊れるほどやはりトツ子は音楽への感受性が高い人なのだろう。好きなシーンだと文化祭ライブでシスター日吉子がステージに背を向けて歩き出し、廊下でひとりで踊っているところがあった。自分もバンドをしていた過去に背を向けつつ自分のいまの場所で踊っている感じ? 温厚そうな先生がおそらくちょっと激しめのバンドをしていた、というのはけいおんのさわ子先生も思い出した。

 

・edがミスチルなのはミスマッチが不安だったけど(ミスチルは好き)、編曲に牛尾健輔が携わっていてちょっと映画側に寄り添う感じになっており納得した。ほかの曲についても色々元ネタがあるみたいなツイートを見たけど洋楽が分からないので分からず、ただひたすらに土天アーメンのギターが相対性理論すぎてずっと笑っていた。あとここ数ヵ月くらいdawを開いていじってた曲が土天アーメンにかなり近い曲だったので、流石の完成形みたいなのを見せられて悔しかったのもある。反省文は作中のギターのみの部分だけ聴いてドラムのったら気持ちいだろうなーと思っていたらその通りになって気持ち良かった。

 

こんな感じ……見るまで一切の感想を断っていたのだけど爆発的に拡散されたような雰囲気もなく(大衆受けすることは大事だとは思わない)、数件目に入ってしまった感想が否定的だったので不安だった。不安になりながら見たのもあり最高!とまではいかなくても実際見てみてぜんぜんいいじゃん!という感じだった。余裕があったらもう1回くらい見たい。もうひとつ配信された『Garden of Remembrance』は「ひろしまアニメーションシーズン」という催しで8月17日に上映されたらしく、地元で帰省のタイミングが合えば見られていたなあと思う。いざ見ようと思ったら自分が契約しているdアニメストアアマゾンプライム支店ではまだ配信されてなかった(13日より)のでまた感想を書きたいです。