nikki_20240905「龍輪直征『大室家』(2024年)」

 

 

きみ色でアニメ映画を見る機運になり(感想はまた更新するつもり)、気になっていた大室家が塚口で上映終了間近なのを知って見てきた。tvシリーズや原作漫画の知識は一切なかったけど楽しめました。次の日からルックバックが公開だったりしたのでこっち見た方がよかったか……などと思ったけど、あまり難しく考えずにみられる作品を求めていたのでよかった。本当に難しく考えずにみられたかは微妙。しかしこういう女性しか登場しない萌え萌えみたいなのは本当に久しぶりでそういう成分を得られてよかったというのに尽きる。dear sistersを前編、dear friendsを後編として、作中の台詞とかはメモしたわけではないので厳密な言い回しはかなり異なってると思います。

 

dear sisters


opがモノクロ実写背景に動くキャラの絵だったのでびっくりした。小市民や負けヒロインあたりで話題になっている?印象で、これの公開時期は夏アニメと被ってないうえ目新しい表現というわけでもないのだけど、ここでも見かけるとは!という……。視点がぐいぐい移動してキャラ目線になったり空撮目線になったりして面白かった。塚口サンサン劇場は街中のそれとは違って地元の人が行き交う小規模な駅前にある雰囲気が好きで、上映前に20分くらい周りの住宅街を意味もなく歩いていた。そうして散歩していたのも効いてぐっときた。傍から見れば変哲もない町中をキャラが歩いているのは、変哲もない日常が愛おしい、という日常系のテーマと呼応するようで、この作品に限らずこういう演出にはちょっと弱い。

 

始まって本編は全体的に動きがキビキビしていて、髪の色と制服に合わせて?全体のトーンが統一されていた。そのうえで後編冒頭のダサいトレーナーだったり、強調するものはトーンを外れた色が使われているのは当然だけどアニメだなあと思う。撫子の電話するときの仕草、夜の学校での花子とみさきのやりとりなどでは仕草の描写が細かくなって好きだった。ちなみにロリコンであることを自虐やいじりにするような最近の風潮は嫌いだけどロリキャラは好きではあるから、花子のエピソードはよかった。

 

学校ものを見るといつも思うのは、ただ単に同じクラスというだけで全然性格も境遇も違う人が共同生活を送っている、良くも悪くもおかしさである。これも異なる学校の子たちが大室家という姉妹を通じてゆるくつながるのが良くて、学校という場と家族という場を行き来しつつ繋がったり離れたりで生活が続くんだなということに思いを馳せていた。ここでは大室家の三人とも(主に櫻子が)学校でも家でもほとんどキャラがぶれてないのがちょっと怖い。

 

2つの作品を通して長女である撫子が誰かとやりとりする描写があり、そのパートナーがおそらく学校にいる三人の友人のうち誰かである、ということだけが結構尺を裂いて匂わされる。視聴者に伏せられたままで学校での友人とのやりとりが描かれ、家で撫子はパートナーと「学校では普通に振舞えてるよね」と電話する描写もあって面白かった。一方で花子の同級生「みさきち」を櫻子が犬の名前だと勘違いするエピソードが途中であって、これは逆に見ている私たちだけがその齟齬に気付いて登場人物は気づかないアンジャッシュのコント方式である。ここはちょっと分からなかったのだけど、たぶんコンビニ前で櫻子とみさきちが話すことでその齟齬は解消された?っぽくて決着はつく。でもこの撫子のパートナーをめぐる描写は登場人物だけが知っていて、私たちに対してはずっと隠されていて、このみさきちのエピソードと対比するようなもどかしさがあった。

 

dear friends

 

途中のトランジションが特殊になっていてその違いは何?と思った。またそれぞれの学校での姉妹を並行して描くことで一方そのころ他の姉妹は……というパターンのオチになっているのが大半で便利な形式だと思った。

 

前編では撫子がパートナーへ「月が綺麗ですね」とラインを送る意味深なカットで終わり、これが一体友達三人のうち誰なのか?というのがこの後編で回収されるように思ったけど、結末では一切分からずに終わった。こんなミステリの犯人当てみたいな趣向ある!?と面白かった。途中で櫻子が撫子へ恋人の有無を質問して、「答えないけど、自由に解釈していいよ」というように答える場面があった。これはおそらく視聴者に向けてのものでもあるんだろう。原作やシリーズのことは知らないが、この演出的に原作でもこのパートナーの存在は触れられていない気がする!けど分かりません。

 

櫻子は撫子の恋愛事情について探る挙動をしていて、でも手がかりは掴めていない。分からない、という点で見ている私たちと櫻子の視点が一致する。やっぱり姉妹といえども学校と家は違って分からないことがある……でも姉妹の結束は変わらない、という話なんだと思っていた。そうなら好きだしこのまま正体が誰か分からずに終わってくれ!と思ったら本当にそうなったのでびっくりした。

 

ただ全て思い通りだったかというとそうでもない。ラストシーンでは撫子が櫻子へ「恋人については学校から帰ったら教えてあげる」と答えてから三人が登校する場面で終わる。こうなると姉妹間でも分からないことがある、というわけでもなくなり、撫子の彼女は視聴者だけに伏せられたものになってしまう。だからどういう意図なのか分からなくなってしまったし、そこのやりとりはいらないのではと思った。でもここではまだ姉妹間でも秘密のままで、帰った後のことは描かれなかった(教えなかった未来もありうる)。やはり姉妹間でも秘密があって、それでも家族というテーマだったのかもしれない。

 

また思うのは、櫻子が「恋人はいるの」と訊くも結局撫子は「恋人がいる」と一言も言っていない。「恋人については後で教える」とは言っているけれど。「好き」と言い合ったり「月が綺麗」と送るようなイチャつきは見せるものの、それだけが恋愛ではない。滅茶苦茶無理があるが、学校で描かれた三人の友人以外が恋人である可能性もあるし、あるいは三人のうち二人と付き合っているような可能性も捨てきれはしない。撫子が恋人と喧嘩したあと三人が全員落ち込んでたり、復縁したあと三人が全員機嫌がいいのはできすぎな気もしたが、それぞれ全員が撫子に対して頬を染めるシーンもある。これは裏を返せば仲の良さを示していて、dear friendsというタイトルの通り誰が恋人でも、そもそも恋人という名前である必要もないそのままのfriendsであるということなのだと考えた。

 

ちなみに櫻子が元気がなく、腐れ縁の向日葵が他の子と遊んでいることが原因だと花子がこっそり察するシーンもある。また、撫子がパートナーと喧嘩をする原因はネトゲで知り合った友達の話をして、嫉妬されてしまうからである。家族は家族として大切で、それとは別に特別な思いを寄せる人がそれぞれにいて、学校と家族etc.というそれぞれの場があり、それを完全に共有しなくても関係は変わらないということを全体から勝手に読み取った。学校と家に限らず、職場とか部活とか趣味とかインターネット上とか私たちにもそういうところはあるわけで、撫子のネトゲみたいにそれぞれの場所ごとの表情で人間関係がややこしくなることもあるけれど、それは自然なことで互いを好き合う気持ちはあっていいよね~という救いの映画でもあるのかもしれない……。だから難しく考えずにみられる作品を選んだつもりが、結構いろいろ考えてしまったのだった。でも一言でいうと萌え萌えだった。

 

あとポスターとかのBALCOLONY.ってよく見る名前だと思ったら原作や百合姫の表紙とかにも関わっていて幅広いなーと思った。EDの曲がjcoreっぽいだという評判も見ていて、じっさい「パッチワーク・エトセトラ!」がそんな感じだったので面白かった。見てみたらKijibatoさんだった。一方で「My Sunny Side!」がたまに聞く曲調だなと思って調べたらジャクソン5「I Want You Back」に代表されるモータウンビートだと分かった。ゆるキャン△の「SHINY DAYS」とか……好きなビートだと知れたのでうれしかった。あと「大げさに愛と呼ぶんだ」ってタイトルもいいですね~。