nikki_20240719「交通量調査系アルバイトの感想」


ここ数ヵ月で交通量調査のアルバイトを数回やった。その際に得た気づきなど。単なる感想でもあるし、もしこれを読んでいてこれからするという人がいたら(いるのだろうか)参考になるかもしれないという気持ちもある。

 

なんとなく怖いのでぼかした書き方をすると、私はだいたい5回くらいこのアルバイトを経験したことになる。すべて同じ調査会社に雇われているし、あくまで経験した範囲内でのことになるのはご了承ください。おそらくもっと世界は広い。

 

拘束時間でいうと主に日中に12時間のものと、朝から翌朝まで夜間を通して24時間で行われるものがある。24時間で2万円強であり半分の時間だと半分になる。拘束時間は長いが、2時間数えて2時間休む、あるいは2時間数えて1時間休むセットがずっと続くわけで実際はその半分から3分の2くらいが勤務時間である。当日朝集合、前日集合のケースがあり選択できる。前日集合の場合は車で移動し、車内で睡眠をとることになる。当然かもしれないがなるべく当日朝集合のほうがよい。車で見知らぬ他人と身を寄せ合い、座ったまま眠るのは厳しいし、移動時間などを含めると睡眠時間は少ない。車の外へ出て自由に睡眠をとってもよいが、場所探しで時間が消耗する。

 

とはいえ私の場合、そんなに都合のよい圏内で計測が行われることは少なく、当日朝に集合できることは少なかった。深夜に集合場所へ行くとパッと見で分かる人だかりがあり、受付が行われ、それぞれの車へと仕分けられる。この集まっている人だかりの時点でうんざりする。「高速バスの“ここには金持ち一人もいませんムード”が居心地良すぎる」というツイートが印象に残っているが、そのさらに下のムードといえば分かるかもしれない。交通量調査に頼らなければならない、あくまでカウントする機械として扱われる人々が暗い街の一角に群れている。蟹工船の書き出しをよく思い出すし、集合場所が街中で高級なビル街だったりすると、本当に皮肉に見える。酷い言い方をすると成年漫画に出てくるようなおじさんたちがたくさんいて、良い言い方をすると、5回の経験ごときの私がこんな文章を書くのが恐縮なほど、歴戦の勇士たちがたくさんいる。具体的に何回やったかを訊いたことは一度もないのだけど、年齢層が高いからそう思っている。そういう人たちの中へ合流する。

 

ツマミ具依【毎週水 歌舞伎町ONE CUT】19〜24時@tsumami_gui_

高速バスの“ここには金持ち一人もいませんムード”が居心地良すぎる

https://x.com/tsumami_gui_/status/1773861430191935923

 

だから女性は少なく1割いるかいないかの程度、そして男性特有の空気みたいなのが厳しいときもある。これはどんな場所でも言えるが、人間関係の当たり外れはあるだろう。業務はシンプルでも人間関係がよくないと大変だなというのは経験して感じたことのひとつである。ここまで経験したなかで人間関係が悪かったのは1回だけで、あとはぜんぜん大丈夫だった。ただその1回の印象が強いだけである。ムードにうんざりするとは言ったけど、人柄は分からない。質問したら答えてくれるし、優しい人もフレンドリーな人も寡黙な人もいて、色んな理由で来ている色んな人がいる。重要なのはたかが1日だけの関係ということである。最初から最後まで必要最低限のコミュニケーションしか取らなくても与えられたことをしていれば終わる。ただ終わるころには奇妙な連帯感が生まれてもいる。

 

車tier
S 痛車 街宣車
A 重機 緊急車両
B バス
C 普通自動車 貨物自動車

場所にもよるけど痛車はかなりラッキーである。

 

作業はひたすら流れる車を数えて一定時間ごとに紙へ書く。ナンバープレートを見ると車種が判別できるが、すぐにパッと見で分かるようになる。最初に24時間をやったとき、夜に入ると難易度が上がったのが印象深い。暗くなり視認性が落ちるのに加えて、車のスピードが上がる。すると数えにくくなって、ちょっとは退屈がまぎれる。本当に夜の車はスピードが上がるんだと興奮したし、信号機の統制の役割、ナンバープレートに意味があること、自動車学校などで知っていたことが実際に分かるという興奮がある。

 

気を付けることといえば、カウンターは落とさないよう慎重に扱うことかもしれない。簡単に目盛りが狂うからだ。吹奏楽部だったとき、メトロノームは落とすと狂うので厳重に扱われていたのを思い出す。カウンターを落とすのは手が当たってというのもあるけど、眠気との戦いにおいても起こり得る。

 

このような作業系において眠気との戦いはよくあげられるが、このアルバイトにおいて居眠りはほとんどできないだろう。他人の目が常にあり、車はうるさく、不定期で監督が巡回に来る。夜間に通りが少なくなれば眠れるが、しょせん外の道の真ん中で眠るわけだから、のび太でも至難の業ではないだろうか。それでも眠気は来るわけで、これの対処法はとにかく暇を見つけては眠れ、としか言いようがない。いかに休憩時間で身体を休められるかがこのゲームの戦略でもある。

 

眠ったところでバレなければ問題はない。車の数は見ている自分にしか分からないのだから、嘘の記述をしても問題はないのだ。人間関係にも重なるが、現場にも上下関係がある。私達調査員を雇っている会社もどこかから依頼されてやっていて、すなわち直接データのスペシャリストが来ているわけでもない、たぶん……。だから現場で数を見て、これは不自然ですね!?と即座に言われることもない。もちろん限度があるという噂も聞くので、ほどよく適当にということである。ただ私の実感としてはあまりにすることがないので、デタラメな数を書いてぼんやりするよりも、真面目に数えた方が退屈がまぎれる。

 

最初は暇を潰す元気があり、車の音にかぶせて大声で歌を歌ったりする。おすすめの暇つぶしは右膝と左膝を叩いてポリリズムを修得することである。これで1時間くらい潰せたことがある。暇つぶしをしなくても、だんだん脳は処理落ちしてきて、この自動車ってバイクだっけ?みたいになってくる。そうして半分いかないくらいで限界を自覚する。抽象的だが、この「あー限界だ」という感触をいかに自覚しないか、自覚する瞬間を引き延ばすかが大事だと思う。そこからは耐えつつ考え事をする。やがて夜に入るころには考え事をする元気もなくなり、ただ耐えるだけになる。だんだん漂白されて身体が機械になっていくような感覚へ陥る。終盤は終わる喜びがモチベーションになる、と思うかもしれないが、私の場合は終わることへの嬉しさすらも感じなくなっていた。朝が来てぼんやりと終わる。シフトにもよるが早上がりを選択すると自力で電車で帰ることになるし、そうでなければ最寄りまで送り返される。日中に働き夕方に車で送り返される(さらに遠い町である)際は、高速道路で夕暮れを見ることができる。ただ渋滞に巻き込まれることもあるけどこの時間はかなり好きで、その日の調査全体のモチベーションにもなりうる。

 

全体を通して言えるのは、休憩時間ごとにモチベーションを設定することだろう。次の休憩はあれを食べよう、食べに行こうというのが強力な力になるのだ。紙にシフト表をメモして携帯するのがおすすめである。終わったらチェックを入れたり、休憩時間にすることをメモするようにしている。

 

環境は大きく影響する。まず天候があり、曇りや雨はよくない。蒸すし濡れて不快なうえ、景色の代わり映えが皆無になる。青空や夕暮れが綺麗だと思うことさえも娯楽になりうる環境で、ずっと曇ると本当に楽しくなくなる。おまけにそのような天気だと人が減って車が増える傾向にあり、人間観察の楽しみはなくなって手元は忙しくなる、最悪の効果しかない。暑い、寒いもあるため温度調節は必須になる。しかし夏は夜に虫が多いという罠があり、なるべく肌を見せない格好の方がよい。私がかつて行った場所では夜にゴキブリを何回も見かけることになり、鞄に入らないか常に気を配る羽目になった。場所は様々である。一番はトイレだろう。近くには無い場合が大半で、簡易トイレを持って来た人の話を聞いたこともある。休憩する場所も与えられず、自分で公園などを見つけて眠らないといけない。移動用の車を休憩場所として提供してくれる場合もあり、それだけで格段に違う。逆に車もなく、近くに食事を調達する場所もない場合はほんとうに過酷になる。

 

これらの条件はほとんど事前に与えられない。まだ当日朝集合なら当たりがつけられそうなものだが、たいがい集合場所から離れるので本当に分からない。さながらミステリーツアー、毎回違う場所に身一つを投げられる。交通量調査のアルバイトで一番楽しいと思えるのはここである。持ち物を対策して、毎回どう生き延びるか休憩時間に歩き回って案を練る。生き延びるというのは半ば比喩でもなくて、食料の調達や夜間の治安などは特に命に関わる。そのうちに知らない土地のことを把握していき、作業中は街を定点観測できる。朝に登校していた学生が夕方に帰るのを見かけたり、たまにお疲れ様ですと声を掛けられると個人的にはうれしい。

 

内容はラクでも継続すると大変という凡庸な感想に尽きるのだけど多少の準備で軽減することはできなくもない。以下に持って行ってよかったものを書き出してみたけれど、持ち物は少ない方が移動などの面でよくはある。

 

タオルや汗拭きシート

だんだん肌がベタベタしてくる。なぜか考えると、体育の授業や運動会を思い出して腑に落ちた。おそらく車道の側で塵を浴び続けるからだあろう。塵やガスを浴びなければならないのはなかなか酷な環境で、そういう意味でも健康でないと厳しい労働だと思う。その対処としてタオルなどは有効だし、肌を出さないことは虫刺され以外にもこういう効能がある。手袋も有効だけどボタンを押したりペンを持ちにくくなってしまう。

 

エストポーチ

すぐに必要なものを取り出せる。

 

帽子 日焼け止め

24時間やっているとかならずどこかで日光に晒される時間がくる。

 

小さいキャンプ用イス

かなりおすすめ。日常の中で意識してみると、外において自由に座れる場所は案外少ない。これが交通量調査においてはかなり欠点であるため、どこでも座れる椅子があるといい。100均とかでも売っているし、あると調査関係なく待機列に並ぶときにも役立つ。

 

夜用の装備

寒いときは夜が特につらい。個人的には合羽を着て、さらに下へライトダウンジャケットを着たらよかった。また合羽をビニール袋に入れてクッション代わりにすることもできる。

 

耳栓

車はうるさい。昼は交通量が多いし、夜は治安が悪いとバイクが暴走している。耳栓ってこういうときに役立つのだと感動したが、密閉性が高すぎると蒸して中耳炎になるので気を付けたい。関連してアイマスクやネックピローもあると、(特に車で休憩できる場合は)睡眠の質が上がるのでよい。

 

虫スプレー

虫が多い季節には有効かもしれない。まだ持って行ったことはない。鞄に虫が入らないようにしたほうがよい。いちどリュックの中に菓子パンの袋を入れていて、わずかなチャックの隙間から侵入したアリまみれになった。これがトラウマになったので、私は大きなビニール袋をリュックサックにかぶせるようにした。そこまでしなくても密閉性を高くする等はできる。この点からも持ち物は少ない方がいいということになる。

 

以上です。こういうのって増田に書いた方がよかったのかもしれない。

 

追記 20240903

この記事を書いた後にも交通量調査をしたのだけど、警報レベルで暑くて外出している人がいない日に、ほとんど人のいない田舎で通行人を数える、ということをして熱中症で倒れる人が続出していた。ひとりが倒れてその埋め合わせをするために行った人も倒れ、私は電話しながらの荒い運転に連れまわされて遠くの病院まで同行する羽目になった。数日がかりだったのだけど、これにより参加者の睡眠時間も少なくなったりした。責任の所在なども曖昧だと感じたので、やはり基本的にはおすすめできないのかもしれない。