nikki_20230315「H・ジェイムズ『ねじの回転』」

 


有名なホラー小説として読んだ。すごい怖い話を想定して読んだのだけど、そういう感じではなくて最後まで?のまま終わってしまった。しかし不満はなくて、そういう不穏さを端々に出しまくって終わる印象だった。大きな館、謎めいた子供、広い庭、塔、という舞台設定から好きだなと感じたけど、そこから滲む歪さがだんだん確信になっていくようで良い。そして今やホラーでは定番?であろう多重の語りもよかった。ある女性が書き残した手記を読み上げる老人の話を写し取った、というややこしい構造になっていて、だからこそ信憑性や一人称の語り手に対する不安も増していく。好きな場面をあげるとするならば、終盤で窓の前に立った子供を描写した場面だと思う。

 

>彼の覗いている巨大な窓の四角い枠とガラスは、まるで彼の失敗を象徴しているようだった。とにかく、わたしは、そこに閉じこめられるか、または閉め出されるかしている彼を見るように感じた。彼はすばらしい少年だが、でも決して安楽ではなかったのだ。そう思うと、わたしの胸は希望に高鳴った。

 

読んだのは図書館で借りた光文社古典新訳文庫なのだけど、読みおわるころにたまたま古本屋で見つけた新潮文庫のものを買った。上は後者の蕗沢忠枝訳から引用した。窓枠の前に立つ人について、その枠が心情と合わせて描写されるのは響けユーフォニアム(アニメ)の学校の窓枠でも出ていた気がしていて、なんとなくここも良いなと思った。それ関係なく、大きな窓枠のまえに美しい少年がぽつんと立っている図、絵として怖いような綺麗さを彷彿とさせてよい。全体的にこういう子供の怖さ、行動というよりその無垢な雰囲気が反転するような怖さも描かれていてよかったです。こういうイギリスの怪奇小説はもっと読んでみたいかもしれない。ちなみにこれを読んでいるときに大きな屋敷に家族で住んでいる夢を見ました。