nikki_20230121「和山やま『女の園の星』」

 

 

2021年(2022年だと思っていたら2年前だったので怖い)に1巻だけ読んで、なんとなく放置していたのを読み切った。女子校を舞台に、教師である男性主人公とその周辺が織りなすシュールな日常を描いたギャグ漫画。肩の力を抜いて読めたのでいまのところ2023年に読んだ漫画では一番かもしれない。こういうのがすきです。

 

ギャグ漫画なのだけどそういうデフォルメがなくて例えばそれは授業やテスト中の生徒たちの仕草を全員分細かく書いているところに表れていてよかった。そういう絵柄でひたすら軽快に話が進むのでそういうギャップも面白い。各話の扉絵もおしゃれだなと思った。倫理の中村先生がすきでした。

 

印象に残っているエピソードとしては12時間目(話数の単位)の会食恐怖症の生徒の話があった。主人公の星先生が会食恐怖症の生徒の克服のため、保健室で一緒に食事をすることになる。生徒はオンラインで知り合った友人と会食をする予定があり、克服したいのだという。しかし途中でほかの生徒が保健室へ入ってきて、その生徒は食べているものを戻してしまう。そこで星先生は入ってきた生徒にも、その生徒にも言い聞かせるように「誰も悪くないです」と呟く。ここがよかった。一抹のシリアスめなシーンであり、それで空気が明るくなるわけでもない。自分語りになってしまうが、私の父も流行り病の影響で潔癖症が激しくなり、一時は食事をすることも難しくなっていた時期があった。そのときも私は(主に自分に対して)同じようなことを言い聞かせていたので、そういう共感からよいシーンだと思えた。この話自体はオンラインで知り合った友人が実は保健室へ入ってきた生徒だった……というよくあるようなオチで終わるのだけど、決して会食恐怖症そのものを茶化さない「誰も悪くないです」という真摯な発言がギャグの合間に挟まるからこそしみじみといいなと思えた。

 

14時間目の三者面談の話もよかった。話自体はドタバタしたやりとりが展開されるのだけど、実際にこれをこなしている先生の負担ってすごいだろうな、と思いを巡らせながら読んでいた。そうして最後のページで「明日はやっと土曜日ですね」「そうっすねとりあえず二度寝して…あ 久々に銭湯でも行こうかな」「いいですね」とやりとりする教師二人が描かれて終わる。このやりとりになんとも哀愁を感じるというか、本編ではあまり直接的に描かれない仕事の大変さ、みたいなものがここですっと示されたような気がしてよかった。私は教員免許取得予定であり、教師ってこんな面白いことばかりじゃなくて過酷な仕事だろなうと思うけど、こういうこともあるかもしれない……という一抹の希望になる漫画だった。