nikki_20221230「ドキュメント72時間」

 

この間テレビをつけたらNHKで「ドキュメント72時間」の傑作選が再放送されていた。投票によって選ばれた歴代ベスト10の回をひたすら流すというものである。ベスト5だけ見たのだけど、とてもよかった。あるひとつの場所に72時間取材班が滞在してそこにくる人々にインタビューするというシンプルな番組だけど、NHKひいてはテレビ番組のなかで一番すきだ。取材することで人々の背景が見えてくる。その人々が場所の特性、集まった他の人の人生と交錯していく様子は事実は小説より奇なりというか、下手な群像劇よりも見ごたえがある。

 

自分が何気なく見ている風景にもそんな世界が後ろに広がっていて、社会ってそうやって動いているんだなと思う。こういう人々が懸命に日々を生きていて、それが少しずつ世界を動かしているということに私は得も言われぬ尊さのようなものを感じる。それを体現しているのがこの番組だと思う。もともと中高で塾から帰ってきた時間にテレビを付けるといつもやっていた番組で、そこから好きになったというか、親しみがある。

 

傑作選では「海の見える老人ホーム」という回がよくて、海沿いに或る大規模な老人ホームを取材する回である。80~90年生きた人々だけが生活する閉鎖的な空間はSFのような趣があったし、彼らの発するひとつひとつの言葉から現状の自分では分からないような境地に至っているのだと感じさせられた。取材班に気さくに声をかけるおじさんが最後の方でもう一度出てきたり、後日の取材で既に亡くなった入居者の方がいることが分かったり、あまり軽率には言えないけど見ごたえがあった。「人々が懸命に日々を生きていて、それが少しずつ世界を動かしている」という点で後日譚のような話は好きなのだけど、現実には後日譚という言葉で片付けられないなにががある。そもそもドキュメンタリー自体が人間を物語として消費する側面があるなとは思うけれど、老人ホームの片隅から巨大な人生そのものの一角が顔をのぞかせるような回だった。

 

ちなみにあとは『テクネ 映像の教室』『SWITCHインタビュー 達人達』『ネコメンタリー 猫も、杓子も。』がNHKですきな番組です。