見たので感想。20220523深夜~20220524早朝にかけて視聴。ネタバレします
たまこまーけっと
文化祭の衣装をたまこが着ることで、首のほくろが分かる(10話)
鳥(デラ)が痩せていることで、時系列が分かる(11話)
糸電話の糸が届かない(11話)
などの細かな描写が作品を動かしている感じよかった
2話の百合っぽいエピソードや描写がすき
6話のお化け屋敷のエピソードは構成が綺麗にまとまっていてよい
美少女アニメとして見るのなら、少女たち同士の会話に入ってくるデラは邪魔と感じるかもしれない。僕が日常系=女性のみという観念に縛られているから、このようなタイプのアニメは新鮮ではあった。あとはこのアスペクト比と画質のアニメはけいおんを彷彿とさせて、この時代だな~と勝手に懐かしんでいた。
特徴的だったのは自転車も車も電車もメインには出てこない*1ことで、誰一人として乗らない。そういうシーンがない。移動手段は歩くばかりで、徒歩圏内で生きている彼女たちの生活感、商店街がたまこの世界なんだね~という感慨と情感がある。京アニの特徴である細かい描写を重ねることで作られる世界観(これはほかで見た表現の受け売り)が、これにおいては日常への情感を生み出している。ひたすら幸福に溢れた作品だとおもう。よかった。
たまこラブストーリー
アニメ本編を経たこれがちょっとかなりすごくて、日常系だな~と思っていた本編から決定打を喰らってしまった。別に人が死ぬ事件が起こるわけではないのだけど、構造が美しすぎて後半くらいからはずっと泣いていた。
喋る鳥、見知らぬ異国の王子。そういうファンタジー的存在が物語を駆動したのが本編だった。それらの謎が少しずつ明かされつつ商店街の人々を巻き込み、群像劇も展開していくのがたまこまーけっと。対する映画ではそれらのファンタジー的存在が去った後の物語を描いている。
魔法のような物語装置がなくても、彼女たちの人生は物語を動かし続ける。喋る鳥が偶然に何かを運んだり、それが人をくっつけたり、背中を押したり、そういうことが本編にはあった。それはもうない。そこにはただ変化していく現実と日常だけがあり、彼女たちは自分で行動して人生を生きていく。これが全てで、ほぼあとは言うことはないかもしれない。ほかのひとの感想を見ていて「アニメ版の生かし方がすごい」のようなことを書いていたのだけど、そう思う。アニメで丁寧にドタバタした日常を描いてから、劇場版であえて魔法も何もない純粋なラブストーリーを見せる。それによって、ただのラブコメではない意味を持たせているようで素晴らしい。これが映画単体の実写で見せられたりしたら普通のラブコメみたいに思いそうなのだけど、アニメを踏まえた見せ方がかなり刺さった。
前述したように、本編では頑なに交通機関が出てこなくて歩くばかりだった。しかし、最後にたまこはもち蔵のために(京都)駅まで全力で駆けていく。もち蔵は新幹線に乗りこむ。新幹線のホームでふたりは会う。それは商店街の圏内で展開していた12話の世界が開けていくということであり、たまこが自らの意思で人生を動かして思いを伝えようとする、一歩を踏み出す瞬間なのだ。そう思うだけですごい泣いたし、これを書くだけで本当に涙が出る。最後は糸電話越しでない会話であってほしかったけど、糸がたるんでいたから直接言ったのと同義なのかな~と思ってました。
EDの映像もよくて、高校生が文化祭でやるようなストップモーションムービーをキャラがやったという体で作られたエンドロールのアニメーション、という何周か回ったようなことをしていて面白かった。アニメは「人間の滑らかな動きを絵で表現する」という目標があって、京アニはそこに焦点を当てているように思う。のだけど、ここではあえてコマ撮りを表現してカクカクした動きにしている。ただひとつひとつのキャラの描写はとてもきれいだ。コマ撮りという表現で「キャラがそれを一枚一枚撮影した」という背景を持たせて、立体感を出している感じも本当に素敵。向こうに時間が見えてくるというか
曲もアニメのOP、EDはふわふわした音楽だったと思う。劇場版のEDはストレートなラブソングであり(とはいえ劇場版オリジナルではなくアニメの劇中歌アレンジなのだけど)、そこの対比もよい。
よく考えると若いバンドの曲でストップモーションのmvが多いという勝手な印象が僕のなかであり、それを意識したのかもれないと考えると腑に落ちる。バンドメンバーが楽器を持ってコマ撮りで動いてるイメージって頭にありませんか?ないか…。とはいえ曲調もそうなのでありえそう。例えばandymori「すごい速さ」、おいしくるメロンパン「nazca」、gogovanillas「マジック」等…。
エンディングだけで本編と同じくらい字数を割いてしまったが、本当によかったです。全編を通して彼女たちが生きていく尊さがあるので全部サビみたいな感じで、劇スとはまた違う意味で折に触れて見返したくなる作品だと思います。この世に存在してくれてありがとうございました。おやすみなさい。
*1:追記:思い返すと実際は林間学校回や市民プール回もあったのだけど、バスに乗ったりする描写はなかった。