nikki_20221110「漫画数冊」

 

直近で読んだ漫画について。短めのものが好きですがいつでもおすすめを募集しております。

 

 

panpanya『足摺り水族館』

 

初期ということもあり絵柄がブレブレな印象でよい。今後も出てくるであろうレオナルド(犬であることをはじめて知った)などおなじみのキャラがいるし、短編の為だけのオリジナルキャラクターもいたりする。これをコミティアで買ってみたかった。これであと「おむすびの転がる町」「模型の町」を読むとpanpanya作品はすべて読了してしまうので少し寂しい。「マシン時代の動物たち」、「君の魚」、「エンディングテーマ」好き。

 

 

 

 

毛塚了一郎『音盤紀行』

 

漫画誌青騎士』でデビューした筆者による初単行本であり、レコードをめぐる年代や国も異なる人々の物語がおさめられた短編集。

 

音楽が個人の生活の隙間に浸透していく感じがたまらなく好きだ。誰かの作った歌が見ず知らずの誰かに届く。1回再生されただけで終わったとしても、その音楽が流れた時間は確実に誰か人生の一部を占めている。それは通勤する電車のなかかもしれないし、眠れない夜かもしれないし、喫茶店でメニューを待つ間かもしれない。そうして誰かの生活が蓄積されていく、その隙間に音楽が蓄積して歴史を重ねていく。または思いもがけないところでその音楽が誰かを繋ぐこともある。私の好きなアルバムとして星野源「エピソード」、さよならポニーテール「魔法のメロディ」があるが、それが好きな理由、あるいは影響を受けて上に述べた価値観が醸成されたのかもしれない。

 

かくいう私自身も音楽を作って発信することがある。だから自分の作品を誰かが聴いているという事実はとてもうれしい。SNSが普及した今ではそのような現象も珍しくはないのだろうけど、それがなかった時代は音楽が人を繋ぐことはもっと奇跡的だったのだろう。この漫画はそのまま上に述べた本当に好きな現象を描いていたので、読んでいて少しだけ涙を流してしまった。

 

いままで読んだ漫画のなかでも上位に入るだろう。レコード店の見取り図やジャケットの絵まで細かく描いているところに愛を感じたし、各短篇がちょっとだけゆるやかに繋がっているところなど個人的なフェチを刺激された。「追想レコード」、「密盤屋の夜」、「電信航路に舵を取れ!」あたりが好き。おすすめです。

 

 

 

 

九井諒子『ひきだしにテラリウム』

 

ダンジョン飯』(未読)の筆者によるショートショート集。「パラドックス殺人事件」、「えぐちみ代このスットコ訪問記 トーワ国編」、「パーフェクト・コミュニケーション」あたり好きでした。ダンジョン飯はファンタジーものだと耳にしたことがあるが、このショートショートも小さなとっかかりから想像して世界を広げていくような話がいくつか見られて得意なんだろうなと思う(「遠き理想郷」など)。しかしファンタジーには寄らず、SFやコメディもあって満足だった。各話の要素が大集合した表紙もとてもよい。ショートショートはワンアイデアをいかにうまく決めるかだなあと実感

 

 

 

 

こかむも『ぬるめた』

 

こかむも氏によるきらら4コマ。オタクの語彙が多用された密度の高い読むきらら4コマという感じだった。ふわふわしているようだけど、オタク衒学というか細かい作家名とか作品名っぽいネタが多用されるのも印象的。ジョン・ディクスン・カーの名前がちょっとだけ出たりする。2巻のアニメをおすすめされて見ずにエッチな絵だけ保存するディティールとか解ってしまうのでよい。

 

2巻のLINEのチャットをそのまま漫画として使う回は前にTwitterでちょっと話題になっていた気がする。これはオタク語彙と文字を読ませる4コマという持ち味が演出と一体となっているアイデアで感心した。ただタイトルのぬるめたって何だよとはずっと思っている。

 

こかむも氏がtumblrに投稿されている文章はゲームの感想などがあり、いろいろ考えている人なのだろうと伺える。

 

kokakimumose.tumblr.com