nikki_20240123「金子みすゞ『金子みすゞ童謡集』など」

 

2023年に読んだけど特に感想を書いていなかった本の記録と、2024年の三が日に親戚と見に行った映画の感想です

 

 

東浩紀動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』

評論。別に批判的な思考もできず、そうなんだと思いながら読んで終わった。タイトルから難しそうだったが、思ってたよりもオタクについてというか、二次創作の話などが中心である。小さな集合から大きな物語を見出すのではなく、大きな非物語つまりデータベースから無限に組み合わされて生まれている小さな物語たちを消費している、というデータベース消費の話は昨今の画像生成の話とも重なる思った。


ところで図書館で文芸の棚を見るのはずっと好きで、百発百中であるのが清涼院流水推理小説だったりする。見かける度に中身をパラパラ見ているけど、あんな長いのをまともに読んでいる人がいるのか疑問だった。立ち読みだけしている人の感想として、同じ長いのでも京極夏彦のそれなどとは異なると感じる。好き勝手やっているというかSFとか超常的な話まで発展しているような印象があるので。でも彼の本がたくさん刊行されたということは読まれていた証左だろう。この動ポモでも清涼院流水は「変化にもっとも敏感に反応し、もっとも根底的に小節の書き方を変えてしまった作家である」とミステリの要素を自己言及的に取り入れたことで評価されていた。あれって結構すごい本だったんだ……と思った。

 

東浩紀クォンタム・ファミリーズ

ついでで読んだ。現代とほぼ同じ日本を舞台にした並行世界もののSF。図を書いて整理したりしたが、難解で分からなかった。その難解さで何を言おうとしていたのかも分からない。筒井康隆の解説には「現代思想としての多元宇宙SF」というフレーズがあったが、どうつながるのかも分からなかった。ただ参照されている文献が多く、村上春樹論とかも出てくる。そういう意味で衒学的だし、そういう知識が散りばめられているから現代思想ってことなのだろうか? 話としても難解すぎてあまり楽しめず、これが三島由紀夫賞ですか……という気持ちではある。先述した解説はあらすじをなぞった部分が大半であり、やる気のなさそうな文章で笑った。

 

展開はちゃんとエンタメをしようとしている。未来と過去が交互に描かれ、ふたつの時間軸を越えてやりとりが行われる。そのうち別の世界線が出てきたりして、大事件が起こり、最後はすべてがひとつに収束して終わる。その収束の場面では、謎の広い砂漠で暴風雨のなか登場人物たちがひたすらに走る。いかにも!という感じで、思い当たるのは「君の名は。」くらいだが、最果ての地で全てが収束する感じはオーソドックスな印象である。結末では幼少期の自分が犯した性犯罪を大人になってから自白しに行って終わる。いい感じの書き方で終わっているが、それも数ある世界線のうちのひとつの話だろう。自分の性的な罪に向き合っておわりというのも安直に感じた。

 

金子みすゞ金子みすゞ童謡集』

にほんごであそぼ」などでおなじみ、図書室で読んだりもしていた。26歳で亡くなったことや、ネパールにみすゞ小学校があることを知った。基本的に動植物への共感をうたっているイメージだったが、景色をただ描写したものも多くある。日記みたいなものもある。拗ねて家の外にいて、ほとぼりが冷めて戻ろうとしたら「ばんまでそうしておいで」と親に言われたのを思い出してもっと拗ねておかないといけないと思った……という「あるとき」とか実際に体験したのかは分からないけどかわいい。

 

幼い日の記憶や目線の純粋さは子供そのもので、しかしそれを記述して詩にしているのは大人の技術である。大きくなってから見ると子供の目線をそのまま書けるというのはすごいと分かる。しかもそれが十や二十ではなく何百とあるわけですごい。

 

もしもお空が硝子だったら、
わたしも神さまが見られましょうに。
――天使に
  なった
  妹のように。

 

「山と空」(妹には「いもと」のルビがある)

 

死んだ妹についての詩もあったが、調べた限りみすゞに妹はいない。おそらくフィクションっぽくてそれもびっくりした。

 

𠮷田恭大『光と私語』

本屋から毎週少しずつ届く乗り物の模型の一部分

乗り遅れたバスがしばらく視界から消えないことも降雪のため

一年が終わる。青物市場の裏に、夏石番矢の幽霊がいる。

少年の、季節は問わず公園でしてはいけない球技と花火

踏切の向こうで待っている人の、大きなきっと、金管楽器

 

歌集。付録栞にある堂園昌彦の文章には「吉田くんの短歌の特異なところは、通常の短歌が細部の描写へと没入していくのとは反対に、ちょうどカメラの解像度を下げるようにディティールをあえて無視しているところだと思う。そのことが逆に、物語の構造自体に潜んでいる、奇妙さや寂しさや抒情をあぶりだしている。」とあり、感じていたことを的確に述べていてなるほどと思った。生活のことを客観的に離れて見ている感じがしてかなり好きだった。撮影された知らない町の写真のアルバムを見ている感じ。いぬのせなか座による抽象的でリズミカルなデザイン、レイアウトもそれにあっている。


ところで「解像度を下げるように」という表現からは最近「解像度」という単語が多用されていることを思い出すけれど、ここではそれが高いのではなく「下げる」で肯定的に用いられている。刊行されて文章が書かれたのが2019年なので全く現状は関係はないのだけど、面白い。

 

若鶏にこみ『ぎんしお少々』

きらら四コマ。2巻完結かつフォロワーの人がおすすめしていたので。2組の姉妹が登場し、どちらも姉と妹は進学などで別居の状態にある。そこで姉同士妹同士が偶然それぞれの場所で知り合い仲良くなっていく……という漫画。そんなことある!? この4人以外のもそれぞれの知り合いも登場していき、人間関係の把握がなかなか難しかった。そして欠かせないテーマとしてカメラがあり、主人公は姉からもらったそれで人物や景色を撮ることで関係を深めていく。これって結構重要なのだろうけど、登場人物の把握に手いっぱいでうまく咀嚼しきれなかった。もう1回読みたい。

 

隈井『うさぎのふらふら』

イラストレーター・クマノイ氏の漫画。『女子中・高生の制服攻略本』『図解 閉校中学校の女子制服』など制服マニアでそんな女の子を書いている好きなイラストレーターのひとり。こんな最高な漫画書いてたんだとうれしかった。目立ったあらすじはなく、ふたりの幼女が毎回実在する街を歩いていく、そんなごく短い漫画が2巻を通して続く。街にはふたり以外に人間はおらず、あとはぬいぐるみのようなうさぎたちが人間のように生活しているだけ。毎回途中で片方が片方を見失い、うさぎに紛れて「ふらふら」しながら探し、見つける。という漠然とした説明しかできないが、町の書き込みが細かくてうれしいし、一方で交わされるシュールなやりとりや空気はぼんやりしている絶妙な空気が好きだった。

 

草間さかえ『さよならキャラバン』

漫画。好きなアーティスト、スカートの澤部さんがおすすめしてたので。行間で語るものが多すぎて考えてしまい、つっかえながら読むところは多かった。表題作が好き。街を渡り歩くサーカスのキャラバンが来て、そこで曲芸をしている高校生が主人公の学校に期間限定で転校してくる……という話。ちょっと不思議だけどぜんぜん起こりうる話で、日常のさりげないところだけでも色んなドラマがあるんだなという感じが好み。あとは学校という限られた場所で展開される物語と、美しく舞う曲芸との自由さとのギャップがよかった。

 

大白小蟹『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』

短歌の雑誌「ねむらない樹」に短歌とイラストの連載をしている大白小蟹氏の漫画短編集。雪とか氷とかをめぐるちょっと不思議な話ばかりで、冬のイメージがずっとある。秋に読んだのでとても冬が恋しくなったのを覚えている。見開きを使うけど、書き込みが細密というわけではないというのが面白い。死別や失恋など喪失について扱っているものも多いが、その穴が再び埋められるのではなく、ゆっくり受け入れていくよう解決が好み。

 

衿沢世衣子『ベランダは難攻不落のラ・フランス

金子みすゞのように子供の純真さがまぶしい漫画の短編集。純真さから生じるかわいさ、健気さといった感情がある。「リトロリフレクター」に出てくる天文台の女の子が主人公のことを少年呼びするところが萌えでよかった。

 

 

華がないなと思ったので適当に画像を挿入する
片桐崇『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』(2023)

映画。スパイファミリーの予備知識としては「殺し屋とスパイと予知能力のある子供が作戦の都合上疑似家族をしている」くらいで、作品に触れたことはなかった。謀略騙し合いみたいなのを予想していたが、ぜんぜんそうではなく、メインとなるのはアーニャが学校で作るスイーツの材料を3人で旅行して買いに行く!というグルメ漫画だった。いかにもエンターテイメント!って感じでよかった。

 

ロイドはマイクロフィルムがどうとか上部からの指令とか、いかにもフィクションのスパイというかっこよさをずっとやっていた。淡々と敬語で喋りながら倒していくヨルもいかにもフィクションの殺し屋でよかった。最後の口紅のシーンはそんなことある!って感じで笑った。アーニャはひたすらかわいかった。彼女には相手の心が分かる能力があり、犬のボンドに未来予知能力がある。ボンドが読んだ未来をアーニャが読むというふうに二つ合わさってスムーズに物語を進めていて上手いなーと思った。ヨルとロイドが互いの正体に気づいてないなどそれは無理があるだろ、という点はいくつも思ったけど、別にそういうものだし映画そのものの評価が下がるわけでもない。

 

相手の心が分かるだけならば気持ちの齟齬も起こらないようだけど、そうではない。完全に一心同体になれるわけではない。アーニャはロイドやヨルの心が読めるが、逆はないからだ。アーニャは他のふたりに対して自分が心を読めること、ボンドが未来を予知できることは隠している。それは家族がばらばらになってしまうと恐れているからだ。

 

物語の後半においてはお菓子作りのために必要なリキュールが見つからない。アーニャはボンドの未来予知を読んでリキュールがどこで売られているか分かっている。しかし、それをロイドやヨルに話すと家族がばらばらになるかもしれないという怖れから何も言えずにいて、ひとりで探しに行ってしまう。(ちょっと時間が経っているので正確じゃなかったらごめんなさい)これが終盤の展開につながるわけだけど、そういう心が読めてもディスコミュニケーションはある、というのはなんかよかった。実際の家族も完全に心を通い合わせることなどないし、さらにそもそも疑似家族であり、そういう人と人との普遍的な在り方がたとえ超人同士であってもあるんだなーいう感じがよかったのだろうか……

 

そこから終盤はアクションが怒涛のように展開されており、ロイドもヨルも凝った戦闘シーンになっておりすごかった。それと並行してアーニャが便意を限界まで我慢する様子が描かれる。序盤で彼女は重要なマイクロフィルムを食べてしまうのだが、それを敵が取り出すために彼女を捕らえるのだ。普通にその場で殺す残虐性があってもいいが、そこは都合なのか便が出るまで監禁する。便意から解放されるシーンではクレヨンで書いたようなタッチになり、神様と共に空を飛ぶ。やけに手が込んでいてよかった。先日の京都文学フリマでフォロワーの人が描いていた映画レビュー本を読んだところ、同じところを褒めていたのでよかった。

 

思った以上に皆さんから「欲しい!」というお声をいただけたので、京都文フリで頒布した映画レビュー本の電子データを頒布します!
ただのオタクの感想でしかないですが、気になる方は是非🙇‍♂️

【電子版】2023年に映画館で観た映画100本レビュー | negishiso https://t.co/ywG2NVtD2Q #booth_pm

— ねぎしそ (@negishiso) January 15, 2024

https://x.com/negishiso/status/1746849985407353318?s=20

 

映像の話だと最後に噴水を挟んで向かい合い水が途切れるとともに合流する、など3人のつながりを描いたシーンがあった(あともうひとつ思い当たるのは旅先のレストランで銀のポットを挟んでテーブルで向き合うシーンとか?)。あと細かいところは覚えてないが、敵幹部が部下に何かすると血溜まりだけ写され、反射してそ姿が映っているシーンも印象に残っている。結構ダイレクトに死は出てきたし、旅先のレストランで軍部が乗り込んでくる場面とか、戦争下の残酷さもちゃんと描くんだと思った。

 

全体的なテンポとか動きにとても既視感があって、見ながら考えていたが『かぐや様は告らせたい』だと思った(1,2期だけ見たことがある)。フィオナがロイドへ恋していて、表には出さないけどずっとときめいている描写とか。関わったスタッフとかをよく見比べてみたけど、かぐや様1期のプロデューサーである林辰朗氏が、この映画ではチーフプロデューサーをしてることしか分からなかった。うーん単に最近の大きいアニメは全部こんな感じなのだろうか

 

主題歌に星野源がいる!というのも星野源楽曲ファンとして気になっていたが、ダブル主題歌でOfficial髭男dismもいてエンディングで2曲流れていた。いま思うとこんな豪華な楽曲のエンディングは今後二度と見られないかもしれない……。アニメ版がそうだったので今回もこの2組だったのだろうけど、星野源「光の跡」のほうはいまいち映画との関わりが分からなかった。曲としては好きだけど、「喜劇」のほうが好み。なにかのテレビ(関ジャム?)かで髭男はタイアップが上手いと言われていたけど、今回のSOULSOUPも映画のテーマがグルメなのでそのままぴったりでよかった。

 

2023年振り返り

 

 

出来事

1月

 

2月

ツイッターのフォロワーに会う

 

3月

大阪城で行われたカネコアヤノのライブに行った

人生で初めてフィギュア(中古)を買って迎える。鳩羽つぐのねんどろいどと1/8スケール。

 

4月

フォロワーに会う

大阪の万博公園に行く

 

5月

みそきんが発売された当日に買って食べる。いまは食べられないので、逆張りで食べずにどんな味だったか気にするより、ちゃんと買って確かめてよかったと思う。味がというよりそういう学びを得た体験として印象に残っている。

gwに期限ぎりぎりで自動車学校を卒業する。

免許センターに2時間かけて行くが住民票のある広島でないと受験不可と言われる。

初めて文芸以外の同人即売会に行った。関西コミティア(@大阪)。

初めて参加した音mad合作が公開「オモコロ合作 ~FavOmoMædⅣ Amethyst~」

 

6月

京都の出町座で行われた「たまこナイト」に行く。アニメ全話と劇場版をオールナイト上映するという企画。

フォロワーに会う

 

7月

君たちはどう生きるかを公開当日の朝に見た。これもみそきんと同じ意味で印象に残っている。

 

8月

帰省先でやっと自動車免許を取得する。通い始めてから約1年にしての達成だが未だペーパー。

全日本吹奏楽コンクール中国大会を見るために岡山へ。2022年は鳥取に行ったようにこれのおかげで行ったことのない県に行く機会が得られておりありがたい。どちらでも観光というほどのことはできていないが、単に田舎に行けるだけで楽しい。

 

9月

免許が取れたらサイゼリヤで3000円食べると言っていたので実行する

フォロワーに会う

 

10月

東京で行われた「暴力的にカワイイ 2023」に行く。クラブイベント?は初めてだったが数日後にインフルエンザになる。

 

11月

 

12月

 

その他

留年が決まって就職活動を中断した。教育実習に行った。卒業論文締切の直前の年末年始に親戚が亡くなった。提出は無事できた。このその他の部分がかなりあり、この振り返りは文章の形をとって大変だったんだよーと愚痴るみたいなつもりで書いているところが大きい。そういう点で人生に関わる大きめな出来事が比較的多い1年だった、ので年を越してもちゃんとまとめておきたいという気持ちで書いている。

 

直近であったということもあり印象に残っている年末について書く。近い親戚が亡くなるのも、ちゃんと葬儀に参加するのも初めてだった。どこかで卒論の心配をしていたし今もあまり実感はない。隙間を縫って田舎の小さな図書室で2-3時間ほど書いたりしていた。それでも亡くなってすぐは悲しいという言葉のもう何段階か下みたいなもののなかにずっといる、暗くて重い、なにかに閉じ込められてるというか押し当てられているような気持ちがしばらくあって、皆がそれを色んな形で共有していたように思う。死というのは避けようがなくそれに向き合わないといけないのがつらいものだとわかる。

 

一人の人間が亡くなるかどうかでたくさんの人がドタバタしたり心を一喜一憂させているなかで、世界情勢のことなど考えるといたたまれない複雑な気持ちはあった。それに追い打ちをかけるように元旦には地震があり驚いた。地域は異なったので被害はなかったのだけど衝撃を受けた。ちなみに発生当時の私はひとり海で散歩しており砂浜で地震速報が鳴るのを聞いたわけで、ちょっと怖かった。何回か散歩をしたが数日間晴れない天気だったり、人もほとんどいなくて全部灰色のなかにあるような閉塞感がひしひしと感じられていた。どこかの家で家電がピーとなる電子音も聞こえてくるような静けさだったこと含めて、たぶんこの年末年始は忘れないだろうなと思う。

 

見た映像作品

そもそも母数が少なく取り立てて述べるほどのものもなかった……のですべて。リンクは貼らないけど映画の感想はすべて記事に残している。

映画

井上 剛『その街のこども 劇場版』(2011年)
岡田磨里『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2008年)
宮崎駿君たちはどう生きるか』(2023年)
細田守サマーウォーズ』(2009)
クエンティン・タランティーノパルプ・フィクション』(1994年)
石原立也『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』(2023年)

アニメ

新房昭之魔法少女まどか☆マギカ」(2011年)の6話まで

その他

【holo*27 MV】さくらみこ x 兎田ぺこら - モッシュレース【ホロライブ x DECO*27】
https://youtu.be/_ZJ8MrEXIio?si=_aFjraI56pQLcX7K
その他の動画とかも含めて映像作品について書くと長くなるので割愛しよう……と思っていたがこれには触れておきたい。予備知識なしで見て音madの手法だと分かったときはとてもびっくりしてうれしかったし、一部映像を担当した瀬畑さんとちょっとだけ会ったり、これつながりで知り合った人がいたのも今年だった。

 

よかった本

2023年のものかどうかは関係なし
全ジャンルふくめて読んだ本を数えたら72冊だった。去年は90冊ほどなのでなかなか100冊を超えない。読んでない本ばかり部屋に増えており本棚も増設した年だったがそれでも今は入らなくなっており崩壊が近い。

千種創一『千夜曳獏』阿波野巧也『ビギナーズラック』 まず生活を題材にしていて好み。それらを韻律の中にきれいに落とし込んでいてきれいだと思った

小川洋子薬指の標本 なぜか印象に残っている。出てくる小道具の数々が作っている静かで耽美な世界が好きだった。

幌田『またぞろ。』 留年したため。かわいい絵柄とキャラながら生々しい日常の息苦しさを描いていて印象深い。

毛塚了一郎『音街レコード』A面/B面 『音盤紀行』に引き続いて音楽と記憶というテーマが好き。音盤紀行の2はいまから読みます。

三浦哲郎『拳銃と十五の短篇』 生活のなんでもなさの中に面白さや美しさがあるのだと分かった。それらを面白い、美しいと感じるのは当然作者の手つきのすごさでもある。先述した葬儀に行ったときそれでも先の生活のことを考えないといけなかったり、私の妹が思春期らしく生意気に振舞っていたり、いろいろな人の姿を見たのだけど、それらすべて人間の営みと態度なんだろうなと受け入れられたのはこの本を読んでいたことが大きいと思う。

 

よかった音楽

1万5000字ほどになったので別記事にした。

isitsutbustu-todoke.hatenablog.com

 

おわり

毎年まとめるにつけ去年はこんなことになっていると思わなかった、という実感がある。それは自分の知識について、身の回りについて、世界についても同様である。いまはこの作品が最高と思っていても来年には更新されているし、知らなかった人と知り合ったり、あったものが消えたりしている。期待と不安があるが、いまは若干不安のほうが大きい。みなさまの2024年もよいものでありますよう。

 

My Top Songs 2023+α

 

 

My Top Songs 2023

 

Spotifyがまとめてくれた100曲にコメントします。以前はプレイリストの文章などを書いていたけど、自然消滅して最近は音楽のことを書けていなかった。ここで爆発させた結果1万5000字くらいになったのでご了承ください。

 

open.spotify.com


結束バンド「カラカラ」 アニメも見てないのにこれが一番聴いた曲なの恥ずかしい。漫画は読みました。tricotの曲として聴いているところはあり、やはり変拍子をポップに聴かせる感じが好きすぎる!教育実習に行ったときは「いざ踏み出せ自慢の武器など一つも無いけれど」って心の中で唱えながら授業してたり、そういう記憶もある。「君が眩しいから私は影になれる」とかちょっと陰がありながらも「私は私」と自信を持つのが音楽に関しては信念がある山田リョウらしくていいのかなと

 

月あかり研究会「ギターポップ・フォアキャスト」 この楽曲が収められたアルバム『宝石の降る夜に』を知ったのは2022年も上半期とかそれくらい、知ってからずっと聴いている印象があるし、実際去年の振り返りの記事でもよかった曲として触れていた。なので書くと長くなるしこの記事ではコメントは割愛する……。でもこのプレイリストには入っていたのは初めて。今年はCDを手に入れてウォークマンで聴けるようになったので、それも含めるとかなり聴いていると思う。以後これに入っている5曲がすべて出てくるのでご了承ください。

 

GATALISグッドラック ライラック 田中秀和楽曲。キャッチーさ・中毒性という点で完璧。「今年一番再生したと思う曲を直感で答えると何?」と聞かれたらたぶんこれになる。

 

Homecomings「光の庭と魚の夢」 優しさと祈りに満ちている、こういう曲が好きだー。自動車学校の送迎バスでラジオからこれが流れたときうれしかった。これ含むアルバム『New Neighbors』も名盤。

 

結束バンド「なにが悪い」 「おしえて僕は何処へ向かえばいい?」に自分を重ねなかったはオタクいないだろ

 

Sundae May Club「夜を延ばして」 8分の6の気怠さと夜のやるせない感じがたまらない

 

ひがしやしき「さよなら!!にゃんぱすライフ」 ぜんぜん内容は関係ないが自動車学校へ往復するたびに聴いていたといっても過言ではない個人的車校テーマソング。

 

月あかり研究会「試験電波放送#300」 Plus-tech squeeze boxを今年はじめて聴いてこれの冒頭が「A Day In The Radio」を意識しているというのに納得したり

 

リーガルリリー「まわるよ」 キャッチーなんだけど「チクタクチクタク まやくのように/うずくまる五つを 受け入れたまま」など不思議な歌詞もすき。

 

じん「日本橋高架下R計画」 カゲプロを通っておらずじん氏自体を敬遠していたので初めて聴き、こんな良いのかとびっくりした。生活を題材としつつあちこちから音が聞こえる浮遊感が歌詞とMVに一体となっており、よくわからないけどとても気持ちいいという未知の衝撃……。

 

有馬楓花(CV:桑原由気 )「あ・り・ま・す・か?」 有馬温泉の温泉むすめのキャラソン。温泉むすめの曲を聴いていた期間があったのも2023年だった。彼女たちに託された思いやその健気さを曲から感じてぐっとくるので好み。

 

月あかり研究会「宝石の降る夜に」 2023年もこれからたくさん影響を受けました

 

スヤリス姫(CV:水瀬いのり)「快眠!安眠!スヤリスト生活 - DC Mizey remix」 「暴力的にカワイイ」へ行った影響もありアニソンリミックスを聴きだしたのも今年……その入口的なものだったと思う。

 

濁茶「まどの景色は」 ラスラビに向かって間奏がハーフテンポから四つ打ちになっていくところで本当に何回も泣いた。ゆっくりと列車が動き出してそれでも日々は続いていくんだと噛みしめる感覚……。

 

スカート「海岸線再訪」 「打つ手はなし」!

 

是・カゼヒキ「同窓会」 テーマとしていじめがあるのだけど同窓会とか変化していくことへの怖れみたいなのがずっとある曲だと思っていて、ラストの「さよなら/どこかで会えるんかな」のぼんやりした歌い方がぽかんと投げられるのが好きすぎる。もう会いたくないな、でも気になるな、とかそういう感情がない交ぜになったつぶやきが漏れている感じ。

 

Laura day romance「rendez-vous」 スイング最高!

 

月あかり研究会「光の凪にうたって」 好きすぎるので割愛。

 

カネコアヤノ「わたしたちへ」 

nikki_20230305「カネコアヤノ『カネコアヤノ ⼤阪城ホールワンマンショー 2023』」 - 遺失物取扱所

 

平賀さち枝とホームカミングス「カントリーロード スイング最高!2

 

フロクロ「ビビビビ」 「ことばのおばけがまどからみている」など大きなアイデア一本を貫いた曲が多いと感じていた氏だったけど、これは細かいアイデアがたくさん詰め込まれたおもちゃ箱みたいで楽しくもかっこいい。楽曲提供や映像制作、音madとの関わりまで含めて2023年も目覚ましかったなと上から目線だけど思う。マジで私淑しています。

 

月あかり研究会「祈りも魔女も眠る頃」 好きすぎるので割愛。

 

カネコアヤノ「閃きは彼方」 カネコアヤノは去年もかなり入っていたんだけど今年はこれが入っていた。「世界が一度終わりを迎える/やり直せるよ 元通りじゃない」に象徴されるようなありのままを肯定する感じとか、サビの「僕は閃いた」や「会って話したい」という率直な言葉で表された素直の思いの力強さとか

 

日向美ビタースイーツ♪「ぽかぽかレトロ―ド」 上半期は「絶対大丈夫だよ!」が座右の銘だった。町と人の愛おしさ……。ストーリーを少しずつ読んでいます

 

andymori「革命」 去年も入ってたので割愛

 

長瀬有花「むじゃきなきもち」 ボーカルのふわふわした感じがそのままおもち!(これと次の曲が並んでいるのはおもしろい)と組み合わさっていてとても可愛くて心地よい曲になっている。「とろける哲学」もそうだけどcat nap氏との相性が抜群。

 

北白川たまこ「こいのうた」 去年も入っていたの割愛と言いたいところだが10周年おめでとうございました!

 

日向美ビタースイーツ♪「虚空と光明のディスクール 霜月凛さんに関しては衒学趣味でありながらギターが上手くてこんなシューゲイザーまで書いてみせるのはすごすぎると思っていたのだけど、ストーリーを読むといわゆるクーデレ的な属性も持ち合わせておりてんこ盛りすぎる。ほとんど6分くらいあるし間奏もそれなりに長い、リバーブのかかった歌詞は少し聞き取りにくい部分もありキャッチーさという点では地味なのかもしれないけど、惹き付けてやまない魅力があって何回も聴いている。透き通る声質とシューゲイザーの相性が教えてくれた曲です。

 

スカート「月光密造の夜」 スイング最高!3

 

結束バンド「転がる岩、君に朝が降る アニメ見てラストでこれ流れたらたぶん泣くんだろうなと思う。原曲も聴いたのだけど私は女性ボーカルが好きすぎるのでこっちばかり聴いている。ごめんなさい! これは原曲への感想になるが、1番の「戦争をなくすとか大それたことじゃない だけどちょっとそれもあるよな」だったり、2番のなんともいえない夜の気持ちとか、簡潔に表す言葉がないような微妙な気持ちを描写してるところが好き。アジカンは通ってないのでいつかとずっと思っている。

 

北白川たまこ「ドラマチックマーケットライド」 10周年おめでとうございました!2

 

パソコン音楽クラブ「Day After Day feat. 髙橋芽以」 フィクションは嘘にすぎないけど、それでも、っていうテーマが好きなのでこれも好きだった。アルバムもよかった、「It's(Not)Ordinary feat.MICO」の渋谷系っぽい感じだったり、「UFO-mie feat.The Hair Kid - Album Mix」のノリノリになれる感じとか。

 

Nagakumo「マガジン・キラー」 Nagakumoは私が知ってから初めて新曲が出る瞬間に立ち会ったわけで、そこまでリリースペースは速くないものの出るものは全部いいバンドだと分からされた。『JUNE e.p.』の最後の曲にしてカウントダウンから始まり、サビで2ビートになったと思えばうねるようなギター、ドラム、ベースソロをつないで怒涛の勢いで駆け抜けて終わる爽快感がたまらなく好き。EPも全曲少し懐かしさを感じる渋谷系で最高!

 

Sundae May Club「Sundae May Clubのテーマ」 「夜を延ばして」に次いで2曲目。andymoriとかSUNNY CAR WASH「キルミー」とか短いスリーピースの曲は好き。最新リリースの「Teenager」もよかったです

 

空気公団青い花 原作の志村貴子の漫画を読んだのは2022年だがこの曲を聴いたのは2023年である。「歌詞に恋愛っぽい目線が一切なくて、ただふたりの関係を歌っているのがいいなと思う」と前のブログに書いた通りで、ぽつりとこぼすモノローグのような短い歌詞もいい。冒頭の歌詞「君がいてよかった」はすべての愛情の根底にある感情で、ここでああもうぜんぶだなという気持ちになる。

 

リーガルリリー「60W」 ただただ走り出したくなる。京都であったライブに行きたいと思って行かなかったのを後悔している

 

マサラダ「ライアーダンサー」 しっかりハマるように狙った曲が綺麗にハマって話題になってるのは本当にすごいというのは色々な曲を見て思ってきたことだが、これもそのひとつ。

 

結束バンド「星座になれたら」 たぶんぼざろの曲はアニメが放映されたちょっと後(2023年1月頃)にまとめて聴いてしばらく聴いてたから入ってるんだろうけど、これは何が好きだったかはっきり覚えていない。これはローテンポの四つ打ちからシティポップを感じさせる雰囲気があり、まあ好きになるしかない

 

スカート「静かな夜がいい」 スカートは3曲目になるが全曲通して聴こうとしたのも今年だった。案の定好きだった、けどまだ1周聴いたのみでもっと聴いていきたい。これはほぼ2つのコードで構成されている(ufret調べ)ながらメロディーと歌詞とのよさでここまでいい曲ができることがうれしい。

 

さよならポニーテール「わーるど(みたいな)」 役に入っているキャラソンなどは恥ずかしくて慣れるまで時間がかかるという自分の悪い癖があり、今年に入ってやっと向き合った曲。結果はこのプレイリストに入っている通りである。1番が終わってから展開が変わり、謎に壮大なエンディングへと連れていかれる構成はさよならポニーテールそのものの歴史?だったりを知らないと面食らうかもしれない。だけど自分は好きなのは1番サビのあとで、青春を想起させる断片的な台詞がぽつりぽつりと並べられていくのはアニメの音madのようでもある。前にあげた月あかり研究会「試験電波放送#300」もそうだが、台詞がだんだんと世界を立ち上げていく感じがとても好み。語りがだんだん歌になっていく、壮大になっていく様は口ロロ「00:00:00」だったりも思い出すし、いろいろつなげて好きな要素がつまっている曲。

 

三好なつみ(CV:久野美咲)「ふつーの魔法少女でごめんなさい」 フォロワーがおすすめしていて聴いてよかった曲。声優に詳しくないのでいまのところ久野美咲は響けユーフォニアムの鈴木さつきしか知らないが、これに関してはボカロ版よりこちらの方が好き。まず魔法少女テーマとタイトルの良さも半端ではない。言うまでもなくメロディーのキャッチーさも色褪せない。「ネコミミつけてた君の フリルのエプロンドレス」(サリシノハラ)、「天国のレスリー・チャンにおやすみなさいって言うため」(いーあるふぁんくらぶ)とかみきとP作詞のコミカル・喜劇っぽい切なさとが好き……というのはTwitterで少し触れたが、これだと「夜がどんなにどんなに柔らかくても/アイツの頭はカチコチで困る」、「”正義の味方”は涙はみせない。/...ホントはみせない、/...時々、みせない。」あたりでしょうか。コンテンツの世界観は詳しくないのだけど、このコミカルさと切なさの案配が久野美咲の明るい声にあっている。あと単純にロリっぽい声が好きなのかもしれない。

 

クリープハイプ「凛と」 【ちな×クリープハイプ】『でたらめな世界のメロドラマ』の影響。よくわからないけど結構好きで見ながらちょっと泣いたりしていた。クリープハイプは断片的に最初の方からちらほら聴いているけどずっと続いていてすごい。

youtu.be

 

スカート「あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)」 1回通して聴いた中で最も印象に残ったアルバムが『トワイライト』だった。夜にバスや電車にぼんやり乗って車窓を見ているときの感じは好きだしこれはそれがずっと漂っている曲である。

 

ブレンド・A「ぼなぺてぃーと・S」 2023年にはじめて聴いた。曲の冒頭が素材になった音madをリアルタイムにニコニコで見ていた思い出はあるが、ちゃんと聴くとしっかりしたアニソンでいい。作詞作曲のy0c1e氏を知ったのはdeiliumとふたりのきもちのほんとのひみつのマッシュアップからだったけど、エレクトロニカからこれを作るに至ったのが信じがたい。なにか人格が変わったのかと思う。DIYの曲はまだ聴けてないので聴きます

 

Homecomings「i care」 『New Neighbors』がよかったと書いたけどそのなかでも特に好きだったもの。そのまま多様性について歌っている。中立でいたい、なににも属したくない、という態度をとってしまうことが私にはよくあり、それはただの優柔不断とどう違うのかと考えることがある。「光の庭と魚の夢」もそうだが、この歌も属さないことをひとつの強かさや抵抗としているような印象があり、そこは心の隅に留めたいと思う考え方だった。「名前もない気持ち 恋と呼ばないで」「あいまいさを撫でる光」「明日はどんなふうにお腹が空くだろう?」あたりが好き。

 

Special Favorite Music「Royal Memories」 フォロワーのおすすめで知りましたがおっしゃる通り。とてつもなくデカい「全て」について歌っている曲というのはあり、この曲では「人生、人の一生」がそのデカさに該当する。そういう曲では巨大な「もうなんか全部なんだよ!!!」という渾身の感じをぶつけられて喰らわされるのだけど、これもそうだった。

 

南十字 (@minaju_)
神曲すぎる
アニメ映画の最後にこの曲が流れたらどんなに内容がクソでも泣いちゃうかも
それぐらい良い

 

カルロス袴田(サイゼP)🍣🌴 (@hakamad)

100曲聴くと1曲くらいは「最高じゃーーーい!!!!」みたいな曲に出会えるし、1000曲くらい聴くと1曲くらい「あ、マジもう無理」ってなるほどヤバい曲に出会える気がしてるんですが、Special Favorite MusicのRoyal Memoriesは後者(つまりとてつもなくヤバい)

 

スカート「さよなら!さよなら!」 「でもここが僕の居場所には/まだならないような気がするんだ」の歌い出しから好き。逆接から始まる感じ。明るいフリをしながらまだ割り切れない別れの苦さが絶妙に良い。

 

放課後ティータイム「おはよう、またあした」 5人が水色の服を着ているCDを入手したのだけど神聖すぎてまだビニールを開けてない。

 

石風呂「ばいばいスーパースター」 これも「始まりと終わり」というとてつもなくデカい「全て」について歌ってるけど、より身近な何かの日常の風景からそれを予感するような曲。ぜんぶ始まって終わっていくんだよなあという……。関係ないけどVtuberの引退を見かけるとそんな気持ちになりがちで、今年も数回そんなことがあった。


ここでやっと半分だが、ここより下はたくさん聴いてなくても入っているものが多い。

 

結束バンド「光の中へ」 サビあたりキャッチーなメロディーの詰め合わせみたいですごいと思う。「うまーれたーよひーとつー」の同じメロディーの繰り返しから「まるで絵空事」の3連符に詰め込んで駆けおりて、そのあとで「意味を落とせ」の半音で落とすところなど。

 

Mr.Asyu「Haunted Dance」 去年最も聴いた曲なので割愛

 

ARuFa「ベータソング」 「さんさーら!」が厳しくなったのはうーん、悲しいけどこちらもしっかり中毒性の高い曲でよい。TAKU INOUE氏のすごさを実感。

 

石風呂・じん・IA「ぼくらに喜劇を見せてくれ」 就活ソング。これを聴いていろいろしていたら中断せざるを得なくなった。

 

名取さな「アマカミサマ (kamome sano Remix)」 kamome sanoにも触れた年だったと思う、ちょっとアルバム聴いただけだけど……。原曲の複雑なコード進行を渋谷系の流れも汲んだ氏にリミックスさせた名取氏、インターネット電子音楽としてさらに産まれ変わらせたサノ氏のナイスワーク。

 

DIALOGUE+「ぼくらのユニバース」 これもデカさをぶつけられる曲。ここでのデカさはユニバースというタイトル通り続いていく道の果てしなさだと思う。「いつでも生きてる今が続編で本編だぜ!」←その通り!

 

空中メトロ「ネズミ―ランド」 残響レコードから出ているバンド。この曲自体はそこまで残響系っぽさはない?ネクライトーキーとかを彷彿とさせるゆるい曲だけど、アルバムのほかの曲はオルタナっぽいものが多く良かった。タワレコ限定で売られていたアルバムを中古のCD店で見つけ、興奮して買ったのも2023年の思い出である。

 

ひがしやしき「真剣で私を殺しなさいっ!」 ひがしやしきは2022年ごろから聴き始めて、今年は音源を買ってずっと聴くようになったので尚更好きになった。そうしてわかるのは「4巻.zip」が名盤であるということである。最後に繰り返される「救出してくれ」(と書いてころしてくれと読む)の感覚がだんだんわかりつつある。

 

真壁瑞希(CV:阿部里果)「POKER POKER」 渋谷系。どこではじめて聴いたかは忘れたけど探偵オペラ ミルキィホームズ のBGM「シャーロック・シェリンフォード」は結構好きで、この曲の間奏はそれに雰囲気が近い。いま調べるとシャーロックのほうはMONACAが担当しているらしく納得である。話は逸れたが敬語で歌ってくれること、手品が趣味らしいのがうれしい。そこからトランプと席替えのモチーフにつなげた歌詞も素敵。

 

さよならポニーテール「光る街へ」 この曲のことは初めて知ったときから毎年どんどん好きになっている気がする。今年は「まだ見ぬ人や街にときめいていたいよ」の歌詞にしばらく喰らっていた時期があった。MVも最高。めばち氏の画集を通販で買ったり、絵を見返す機会が多くて改めて好きだと実感した年でもあった。たぶん氏の手によるものであること、あと動く彼女たちが見られるという点でも貴重で最高なMVである。

youtu.be

 

カネコアヤノ「気分」 たぶんライブの予習でずっと聴いていた。

 

ひがしやしき「人生ちゃんは続くらしい!」 「あてのないうわごと」からの畳みかけにぐっとくる。

 

崎山蒼志「覚えていたのに」 「覚えていたのに不安で」っていう感覚を拾っているのがすごい。

 

さよならポニーテール「放課後黄昏交差点 これは自分でリミックスを作ったため。それ抜きにしても本当に名曲。

soundcloud.com

 

羊文学「光るとき」 これもデカい「全て」の歌だと思う。轟音のように響くギターが壮大に押し寄せる感じ。羊文学は少しずつ聴いている。

 

PAS TASTA「zip zapper」 GOODPOPとてもよかった。「人マニア」ふくめてこういう音楽が一気に躍り出た年だった……。

 

平賀さち枝とホームカミングス「白い光の朝に」 スイング最高!4

 

スカート「君がいるなら」 サビのメロディがひたすら良くて良いとしか言えない。

 

濁茶「網膜は銀幕 人はみなシネマ」 これもデカい「全て」の歌、さっきからそればかり言っているが人生の曲なのでそう。ただそれを映画と重ねた楽しい曲であり、濁茶氏本人が映画好きなのがMV含め随所に出ている。やっぱり自分が本当に好きなもので、好きなもののために作った曲ってそれが他の人のも伝わるし、良いものになるんだなよねという励みも勝手に受け取っている曲だったりする。

 

PAS TASTA 崎山蒼志「river relief」 GOODPOPとてもよかった2。

 

TRINITYAiLE「チョコラブキッス」 CAPSULEっぽいということで人から教えてもらった曲だった。ラスサビ手前の「待って」のタメが本当に好きで好きで

 

塩原八弥「セカイはスキで動いてる!」 温泉むすめ。合いの手がかわいいくてまさにキャラソン

 

カネコアヤノ「光の方へ」 去年もあったので割愛。

 

PAS TASTA・ピーナッツくん「peanut phenomenon」 GOODPOPとてもよかった2。盆踊りドロップすき。

 

People In The BoxJFK空港」 歌われていることは具体的だけどその背後に立ち上がる物語はデカい何かを予感させる点でこれもデカい「全て」の曲。予感させるというのがすごく、「かけられた巨大な布」という語りのように、後ろで何かとてつもないものが動いている雰囲気がずっとある。知り合いの人と集まって『Family Record』を通して聴くという機会が去年にあり、それでより一層この曲のすごさが分かり聴いていた。夜行バスで3周くらい聴いたりしたのもよかった。

 

さよならポニーテール「それを愛と…」 死別の歌。これを繰り返し聴いていたのは確実に今年だった。6分30秒という尺はどこかが長いというわけでもなくABサビの構成を丁寧に守った結果である。その丁寧さは最近の曲であまり聴かないようでよかった。積み重ねてきた日々や記憶こそを愛と呼ぶというテーマとも重なるようでぐっとくる。

 

今剣(CV:畑中万里江)、千子村正(CV:前田佳織里)、三ツ鱗紋兼若(CV:南早紀)「Naughty night, Magical night」 アキシブ系という単語を知ったのも2023年。

 

きのこ帝国「海と花束」 これもほぼ2つのコードで構成されている(ufret調べ)ながらメロディーと歌詞とのよさでここまでいい曲ができることがうれしい。

 

kurayamisaka「curtain call」 『kimi wo omotte iru』を端末に入れたので何回も聴くようになった。別れをテーマにしたコンセプトアルバムだが、別離の感情はとても複雑だと考えることが2023年にも数回あった。悲しみや後悔、それでも背中を押したいという気持ちの集合すべてがシューゲイザーの渦巻く形に重ねられているよう。様々な形の別れを経験するたびに聴いては感じ方が変わっていくアルバムだと思う。

 

ももすももす「まともじゃないのがちょうどいいの」 メランコリック写楽(バンド)を知ったのも今年だった。プレミアがついているアルバムを買ったりしていたら年末にサブスクが解禁され、解散ライブが行われる旨が発表されてうれしい。この曲はボーカルのソロ名義楽曲。相対性理論の真部脩一との共作なので内容からも令和版の地獄先生と呼んでいる。

 

文藝天国「天使入門」 文藝天国を聴いたのも今年だった。『京大短歌29号』に乗せられた青松輝氏の前号評では最近の短歌に天使というモチーフが頻繁に出ている、と述べられていた。2023年に「天使界隈」という言葉が少し出てきたりしていたように天使は流行っているのだろう。文藝天国は天使をタイトルに入れた曲がもう1曲あったり、水色を徹底してイメージカラーっぽくしている。天使界隈と近いところに水色界隈というのがあるのも、あながち関係ないわけではないと思う。話は逸れたがこれもandymoriなどの短いスリーピースロックに近い。しかし歌詞の雰囲気などは全く異なっている。サビの駆け上がるシンプルなメロディーが好き。

 

スカート「ずっとつづく」 スイング最高!5

 

富水由(CV:花井美春)「元気になあれ!」 スイング最高!6 温泉むすめ楽曲でありながらカントリーっぽいのは北海道だからで、そういう個性の出し方も面白いしのびのびしたポジティブさに合っている。このキャラデザをしたのは千種みのり氏らしいが、よくTwitterでバズっていたり、2023年はまんがタイムきららで連載が始まっていたイラストレーターである。初めて見たときキャラデザもしてたのかーとびっくりした。

 

君島大空「火傷に雨」 君島大空もずっとちゃんと聴きたいと思いつつ……ではあるが初めて聴いたのがこれだった。「花降る時の彼方」、アルバム『縫層』も聴いた。すごいギリギリで成り立っているようなアンサンブルだと思う。

 

Limonène「realism」 kamome sano。こういうギターポップも書けるのかと思い知らされた曲。2分で手を変え品を変えまくし立てるように歌って「恋は終わった」で言い切る構成も素敵。

 

日向美ビタースイーツ♪「3 A.M ディテクティブ・ゲーム」 こんな技巧的なのを演奏してる女子高生バンドがいて、生で演奏してるのを聴いたら気絶してもおかしくない。衒学的な歌詞の印象が強く、ともすれば中二病だのとダサくなりがちなそれが上手すぎる演奏・作曲・歌声によって完全に様になってるのがとってもとってもかっこいい。

 

kurayamisaka「cinema paraiso」 繰り返される「私のこと忘れないでね」がすべて。

 

TOOBOE「錠剤」 TOOBOEはぜんぜん追っていないがしゃべる帽子も高校のとき好きだった。いまは錠剤の冒頭みたいな声を毎日あげて生活している。

 

Sundae May Club「春」 去年もあったので割愛!

 

ハヌマーン「幸福のしっぽ」 ぜんぜん内容は関係ないが自動車学校へ往復するたびに聴いていたといっても過言ではない個人的車校テーマソング2。

 

Homecomings「Songbirds」 去年もあったので割愛!

 

パスピエ「オレンジ」 サビでテンポが半分になってゆっくりになるのがかっこいい、と気づいてからずっと聴いてた。

 

Skrillex with Nai Barghouti「XENA」 スクリレックスをちゃんと知ったのがこれ、今もどういう人か分かってないけどアルバムがかっこよかった。初めて聴いたときドロップで笑ってしまった記憶がある。

 

空気公団「見えないままにしないで」 「がんばれ/誰にだって/何にも何にもないんだよ」←うん……。

 

口ロロ「00:00:00」 これも世界の夜についてのデカい曲である。改めて何回も聴いたりしたが、規則的な1番2番とかがなく、ばらばらにいくつかの構成が繰り返されている感じだとわかった。その繰り返しも多いので合計で8分30秒ほどになってしまっているが、そうして積み重ねることで飛行機から夜景を見下ろすようなあの独特な雰囲気を達成しているのだろう。あと間奏でドラムがアドリブっぽくなるところなど、技術もすごい。

 

やすなとソーニャ「ふたりのきもちのほんとのひみつ」 いまさら癖になっていた時期あり

 

さよならポニーテール「センチメンタル」 あまりにも眩しい。

 

Skrillex, Missy Elliott, & Mr. Oizo「RATATA」 これもドロップで一気に音数が減るのが面白い。

 

スカート「CALL」 しみじみ良い。

 

Explorers of the Internet・PAS TASTA「zip zapper (Explorers of the Internet remix) 」 サビ前の「ド派手に!セックスに!なってみた!」のサンプリングからのきれいなサビのところすき

 

さよならポニーテール「1095日」 卒業ソング。青春についてずっと扱ってきたさよポニだからこそだよな……というだけでぐっとくるし、そこからずっと聴いていた。静かだけど噛みしめるような感慨がずっとあり、最後「涙の表面張力 崩れ」で広がっていく感じがたまらない。

 

+α

ここまで書いて気づいたが、使えないと思っていたウォークマンが使えると分かり、曲を入れて聴くのを再開させたことによる今年の影響はかなり大きい。ところで癖になるキャッチーさと音楽的な面白さが最強に組み合わさった曲は「好きだから好き」としか言えなくなるわけで、ここにある100曲はいずれもそれに該当する。ただ再生回数で選出されているので「好きな曲」の中でも繰り返し聴いたというステータスが異常に高いだけである。これら以外にも「好きだから好き」としか言えないような曲はあるので付記……。

 

花澤香菜「ドラマチックじゃなくっても」 「ドラマチックじゃなくても 退屈だと嘆いても/いつかふと思い出す 今日を」がすべて。もとはラブコメアニメの主題歌でそっちは知らないのだけど、作品に照らし合わせるならばラブソングともとれるだろう。しかし恋人同士に関わらないもっと大切な何かが歌われていて、日常系みたいな、些細な瞬間に愛おしさが宿る瞬間の歌だと思って聴いている。だから好き。

 

omeme tenten『祈りたちよ』 アルバム。100曲のなかで数回でてきたような短いロックで好きにならざるをえない。

 

星街すいせい『Specter』 アルバム。インターネット音楽見本市みたいな作曲陣かつ全曲圧倒的ですごかった。Midnight Grand Orchestraもすごくて星街さんは大丈夫なのかと心配になる。

 

For Tracy HydeHotel Insomnia』 アルバム。タイトルを冠した解散ライブがあったのが2023年3月。これ自体は2022年に出たものだが、リリースとほぼ同時にバンドを知ってすぐに解散したし、いまも全曲聞いたわけではない。でもキラキラしたシューゲイザーがとても好き。

 

Kabangu『ほぼゆめ』 ぜんぜん前のアルバムだが、だんだんしっくりくるようになっていた。いわゆる変な音をたくさん使っていて奇想天外な音楽だが、よく聴けるのは根底のメロとコードだけでも完成されているからだろう。ピアノと歌声だけの1曲目「しくみ」から聴き始めるとそれがよくわかる。Porter Robinson『Nurture』、brakence『hypochondriac』、underscores『fishmonger』、Parannoul『To See the Next Part of the Dream』、AphexTwinRichard D. James Album』、ウ山あまね『ムームート』、長谷川白紙『エアにに』あたりの評判の高いアルバムも今年はいくつか聴いたけどまだよくわからず、でもだんだんしっくりくるのだろうか……。

 

長瀬有花『ほんの感想』 いよわworksは今年もたくさんあって、どれも好きだったけど何回も聴いたのはこれかもしれない。夜通しで本を読んでいる間のことといえば身近だけど、その隙間を覗いて広がる世界を描くとここまで面白い曲になるわけだし、最後にふたたび現実に戻って来る感じもいい(すろぉもぉしょんを思い出しながら)。彼女自身の二次元三次元の間に立っている存在とも重なるようで、つくづくプロデュースも上手いなと思う。「驚異の魔法」もずっと聴いてる。長瀬氏は今年でいちおう全部聴いたが、1周したのみの曲が多いのでちゃんと聴きたい。「駆ける、止まる(2)」の途中でニュースが入る演出とか好きだった。Local Visisonsとのコラボ『OACL』も全曲最高

 

可ラッカ「ピロシキを盗んだ男」 ボカロ。「アスパラガスどろぼう」で知った可ラッカ氏が今年アルバムをいくつか出していた。ナンセンスな歌詞とロック、相対性理論あたりを連想するけれど、また違うというかオルタナティブロックみがあり、そのためか奇妙な切なさがよぎる。この曲の歌い出し「ジャングルジムのさ設計図はさ想像よりも普通だ」のような歌詞の言葉選びも絶妙で、ネタツイやってる人が短歌をやっているということは多いが、そこに近いものを感じる……。合成音声が平坦に読み上げるおかしさも含めて唯一無二。ギターの音のクリアさがずっとどうやってるのか気になっている。

 

ラッキーオールドサン『魔法のことば』 スカート、Laura day romance、Homecomingsあたりを辿って聴いた。好きにならないはずはなく最高。

 

わがつま『第1集』 Twitter経由で知ったアルバム。全曲良い。ミニマルな音に乗せられてぼんやりした生活の中の気持ちが歌われる感じ。

 

rei harakami『Lust』 「joy」しか知らなかった。ウォークマンに入れてからというもの、作業していたときや音が気になって眠れなくなる実家での入眠用にアルバム通してずっと聴いていた。音楽を聴きながら何かをするのは得意ではないが、これはすっと入ってくるようで、点描とか枯山水のように音を最低限に置いて完成されているミニマルさがすごい。思えば上にあげた『第1集』が好きだったので、これも好きになるのは必然だなという感じ。

 

kamome sano・夢ノ結唱POPY『alternative これも巨大な何かの曲で、何かとはSF的な壮大な物語である。滅茶苦茶すぎてどんなジャンルでどんな曲とかはうまく説明できない。人力では弾けないアルペジオブレイクビーツ、ボーカルに託された物語などが混然一体となって流れ込んでくる感じ。

 

the cabs「九月は讃美歌による」 もともと「キェルツェの螺旋」「花のように」くらいしか知らなかった中でいくつかアルバムを聴いて衝撃だったもの。メタルとかだと珍しくないのかもしれないが、シャウトしすぎて何を言ってるのか分からない。アルバムの最後のこれで滅茶苦茶にして終わっており、こんなことしていいんだとなった。

 

Plus-Tech Squeeze Box『cartooom!』 あまりにも良くてびっくりした。と一言で済ませると印象は薄くなるかもしれないがそうとしか言えない。聴いたアルバムだとたぶん2023年で1番衝撃的だった。

 

fuluca「the niconico medley to hyperflip pipeline」 「暴力的にカワイイ」で特に印象的だったのがmomone&currenで、いわゆるhyperflipだったりdariacoreを流しまくっており最高だった。どうやらそのときに流れていたっぽい曲(先にhyperflipovertureやFASTFUSIONを聴いて行けばよかったと後悔している)で、知ったのは暴カワのあとである。タイトル通りhyperflipのいろんな曲の詰め込み・マッシュアップといった特徴をニコニコメドレーとつなげたもので、その掛け算が見事に成功している。2つをつなげて新しい表現を開拓していく、という情熱が垣間見えるようでそこでぐっと来る。

 

以上!

 

nikki_20231230

 

1年のまとめを期待した向きもあるかもしれないけれど、余裕がないのでぶつぶつ最近あったことを書くのみです。クリスマスイブから更新できてなかったのだけど、特に風邪をひくなどもなくいろいろしていた。

 

Study:大阪関西国際芸術祭/企画「拡張される音楽」という展示が大阪駅あたりでやっていたので見てきた。展示は今日までらしいのだけど、私にとっては馴染みのあるボカロPの方々が音声と音楽に関する展示をしている、というものである。一言で書くとどの展示も一回性のある音楽というものがテーマである。複数のパターンを組み合わせて演奏される音楽を聞くことができて、そのパラメータを調整する手段は様々。手動でフェーダーを動かしたり、プログラムされていたり、組み合わせが視覚化されていたり、聴いた人の感想に応じて変化する。ゆえに複数回おとずれて変化を比較したり、時間をおいて鑑賞することが重要になってくる。集客率をあげる動機としてそうなっているのなら面白いが、別にそういうわけでもない気がする。複数回いくのが無理だとしても、SNSで感想を呟くことで他人の聴いたものと比較ができる。写真をとったりがokなのはそういう意図っぽくてそれは面白かった。

 

惜しむらくは、ひとつの展示を除けば音楽をヘッドホンでしか聴けないことである。実際に鳴っていたり動いたりしていたら動画で共有して比較できるのに、と思ったが、それなら別にweb上でやればよい。それにそんな感じの試みは既にwebであるだろう(音楽じゃないけど劣化していくホームページとか)。よりsnsで共有する意義をふやすために視覚でわかる変化をもっと織り込んだり、わざわざwebでない場所でやる意義が増えるとうれしいとは思った。ほぼほぼフロクロさんの展示目当てで行ったのだけど、視覚と結び付けていた氏らしい展示は、先に述べた点をふまえると一番すきだった。

 

 

塚口サンサン劇場で上映されていた「響け!ユーフォニアム」の劇場版を見てきた。劇場版誓いのフィナーレ、リズと青い鳥、特別編アンサンブルコンテストである。アンサンブルコンテスト編はどうしても前ふたつと比べると幕間感というかファン向けの二次創作感はある。1回目に見たときと同じ感想だけど劇場の音響で聴くマリンバの音はかなり良い。誓いのフィナーレとリズと青い鳥は大画面で見るとどちらも圧巻だった。フィナーレのほうは演奏シーンが長いのもあって展開が詰め込まれており、すべてのシーンが物語を進めていてスピードが速い。リズ青のほうは心情を丁寧に描くことに終始していて、ゆっくりしている。どちらかというと後者のほうが好みである。ほかにもいろいろ考えたけど、長いしこまごましているので書かない。ただリズ青は大画面で見ると美しさに恥ずかしくなってきて画面を直視出来なくなり、上を見たり目を瞑ったりしていた。帰りにラーメンを食べた。歩いたのは5分ほどだけど、年末感のある知らない街でふらふらとラーメンを食べるのはよかった。お店を出て息が白いことに気付いた。

 

同窓会に行った。前にいったときに大人になった二次創作を見てるみたいだと思ったけど、同じ感想だった。こんな感じで話すより書く方が得意なのでたくさんの人と話したわけでもないし、名残惜しむ感じもなかった。惜しんでも無常だし、ちょっと恥ずかしいしとか色々。でもまあ最後なんだろうなとも思って複雑である。こういうときにいつも思い出すのは星野源「Frend Ship」で、ライナーノーツにある「依存なく離れていけるのが、本当のフレンドシップだと感じます」という一文である。それだとぜんぜん内容は違うけど辻林美穂「さよならはそれなりに」もタイトルつながりで思い出してしまって、これも大好きな曲なので帰りながら聴いていた。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

二次会三次会的な感じで仲の良かったひととカラオケでスーツのまま20回くらい大富豪をした。共通の趣味もあまりなく、そういうゲームだけがつながりであり、それも心地よいと思う。ところで先に述べたユーフォの映画ではそれなりにきれいに描かれているが、私の妹のしている吹奏楽もなかなか大変そうである。自分のときもそうだった。強いこと、上手いこと、評価されること、楽しくやること、保護者の支持を得ること、両立することは難しいのだなあと苦い気持ちになる。ただ同窓会で見た当時の同期のひとたちはいまだに交流があったりしていて、そんな感じで良い思い出とか人生の一部になってつながりが増えたりとか、各々が良いようになっていってほしいなーと思った。

 

かつて通っていた道などを通って、いま見ているこの建物とか道は10年前にもあったのだ、と思うことが増えた。10年前はその道や建物に、過去と歴史があることに実感が伴わなかった。過去の姿を見ていないからである。でもじっさいに過去の姿を見ているものに対しては実感が伴ってくる。

 

盆も正月もクリスマスも誕生日も一続きの時間を勝手に区切ってるだけだとも思いつつ、そうして強制的に区切らないと無限に続く日常をやっていけないということもわかってきたし、いちおう年末感があるのでそういうことを書いて締める……ほぼ毎日日記をつけはじめたのが2021年1月1日のnote記事(今年はずかしくなって全部消してしまった)、2022年1月からはてなブログに移行してだいたい1年くらいになる。ゆえに大晦日あたりは来年も続けるかどうかを書くのが恒例なのだけど、まあ続けると思う。ただ来年もいろいろあってツイッターをログアウトするかなど考えているので続くかは怪しい。ともあれ読んでくださっている方にはとても感謝しています。ありがとうございます。よいお年をお迎えください。

 

nikki_20231224

 

ツイッターではサンタクロースについてどう言及しても冷笑っぽくなってしまうのは少し悲しく、しかしサンタに限らず、何を言っても文脈に回収されるような、そういう空間ではあると思う。もちろんサンタクロースはいるだろう。自分が小学生のころを振り返ると、そういうものなのか分からないが、わりと夢想家な生徒だった。ひとりで帰ってばかりいたので、自分に都合のいい想像を繰り広げていたり、空を見てufoがあったらいいなとか探してたりしていた。四つ葉のクローバーを探すのも好きだった(いまもたまにやる)。

 

物語の中のオカルト研とかオカルトマニアとかはずっと好きである(黒鳥千代子の影響?)。オカルト研と聴いて思いつくのはけいおんに出てきた2人くらいではあるけど。小学校のころはそういうキャラを単なる同志として見ていたが、いまはもう少し違って、単に好きなものを突き詰めている姿とかイノセンスさによさを感じる。校舎の隅っことかで不気味がられながらも本人たちは楽しんでいる、みたいな光景が愛おしい。

 

オカルトもufoもいまでは陰謀論のことを考えずにはいられなくなってしまった。あまり見かけないというか、児童書とかでの扱いはどうなったのか気になる。TRPGではオカルトや怪奇現象を探究する集団や部活というのはよくある。こちらも親にtrpgのセッションを理解してもらうにはどうすればいいか、という話題が前にツイッターであったのを憶えている。何時間もネットに向かって神話生物だったりの用語を話すわけである。そういうことを信じるのが難しくなっているのは、単に自分が大きくなったからだけではないだろう。小学校のころの私が持っていたのは好奇心だった。だからその対象が魔術や怪奇現象でなくてもよくて、図鑑とかを読めばそれは満たされていた。でもサンタとか魔法とかいまだに信じたくて、それはまた陰謀論疑似科学とはまた違うところで成立すると思いたい。それでも、かもしれない、と想像する愉しみを持っていたいというかそんな感じである。

 

nikki_20231222

 

寒い。数日前からそうだが、ただ突っ立っているだけでも肌を刺すような寒さは今期初めてである。夏が長いというより秋が遅いというよくわからないことを前にツイートしたけど、今日もそう思った。この寒さをもっていまは冬だと実感したのだけど、12月末になってそう感じるのは遅いと思う。11月ごろに秋だと思ったし、8月おわりごろに夏だと思ったし、想定している月と季節がちょっとずつずれているみたいな奇妙さがずっとある。でもきょうは冬至だったらしい。それなら冬だと思うのもわけないか

 

nikki_20231221

 

今年あった大きな出来事として新しいアルバイトを始めたというものがあった。もちろん時間の確保などの面でやらないに越したことはなくて嫌だけどやってよかったと思うことはある。その前にしていたものは正社員のなかでバイトはひとり、雑用をする場所だった。今年はじめたものはアルバイトの人のみが集まった状況でやっている。そうなると様々な理由でお金を必要としている他人同士が集まって気持ちよく報酬を得るために協力し合う場所になっていると感じていて、それが新鮮かつひとつの小さな社会となっているようで面白い。たとえばみんな楽できるなら楽したいという方向が共通したりしている。これが完全に仕事になるとまた違ってくる気がしていて、そういう体験ができているのはやってよかったと思っている点のひとつである。