nikki_20220612「海を見たり焼き肉を食べたりした日」


 だった。ここのところ昼と夜が逆の暮らしを続けており、それをそろそろ治さなければならない。かねてより本を数時間まとめて読みたかったこともあり、この日は朝から図書館へ赴こうと決めていた。はずだった。起きたのは13時すぎだった。それでもここ数日に比べたら早いほうなのだけど、とりあえずせかせかと家を出る。

 

 図書館近くのベンチに座り、とりあえずいま読んでいた谷崎潤一郎「卍」を読み終わった。百合といえば百合を描いた小説として有名な作品である。昼ドラみたいなドロドロした関係かつ関西弁の痴話喧嘩を延々聞かされているようで嫌だなと思いつつ、スタァライトの花柳香子を連想していた。するすると読める語りの妙がよかったです。

 

 そうして図書館に赴いたのだけど、なんと休館していたのだった。いちおう事前に公式サイトを調べて行ったつもり。カレンダーには休館日とか無かったはずなのに…と途方に暮れかけたが、よく見るとお知らせのところに「休館します」というトピックがあったのだった。カレンダーに付記してくれてもよかったのに、と思いつつもう少し遠くの知らない図書館へ行くことを決意する。

 

 こうして知らない図書館へ赴いたのだけど、ここで間違えて特急に乗ってしまうという過ちを犯す。知らない場所と焦りゆえ生じたミスなのだけど、とつぜん車窓から一面の海が見えるというイベントがあった。特急列車乗っちゃって、海へ連れてって…というような出来事だったのだけど、よかった。全くそれがあると予期しない状態で海を見る、という体験はなかなかできない。フィクションであてもなく彷徨って突然視界がひらけたと思ったら海、という場面を見るけどあれを疑似体験できたのだ。うれしい。

 

本当に車窓一面が海でした。



 

 

 

 

 海水浴場みたいなところもやっていて、流石に海に入っている人はいないまでも、ビーチバレーをしている人・釣りをしている人がたくさんいて楽しそうだった。あと海水浴場周辺にありがちな、ちょっとハワイっぽいお店とか寂れたファミレスも味があっていいな、となっていた。とはいえ間違えた目的地であることには変わらず、折り返す。

 

 結局、図書館に滞在できたのは1時間半くらいだったかもしれない。推理短編として麻耶雄嵩「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」「シベリア急行西へ」、泡坂妻夫「DL2号機事件」を読んだ。いろいろ唸らされる作品で楽しかった。

 

 読んでいるときに背中に違和感があったので、読み終わって見ると羽虫が背中に入っていた。途中で何かが首筋に止まった感触はあったのだけど、なかに入っているとは思いもよらなかったな。奥まった図書館でなぜ、という思いがありつつ外へ逃がしてあげた。

 

 帰りに焼き肉を食べることにした。最後に焼き肉を食べたのはいつか覚えていない。それはおそらく実家に帰省した際で、焼き肉とはいえ分厚い肉をステーキみたいに焼いて食べよう!みたいな食事だったはずだ。焼き肉とは言い難いかもしれない。しかしそれを除くと、純粋な焼き肉はかなり前になる。あとお店で食べたのは小学校の子ども会以来だと思う。十数年ぶりだ。

 

 ひとり焼き肉のお店で檸檬サワーと一緒に食べた。ひと口めがかなりよく、やっぱり肉しか勝たん…の気持ちになる。とても幸せな時間だった。しかし調子に乗って元を取ろうとごはんのおかわりをしすぎて、店を出るころには嘔吐しそうになっていた。ここから帰宅するまでがわりと地獄で、お腹を落ち着かせるために座り込んだトイレの個室で30分眠る、駅のホームでポカリを飲んでやりすごす、などを経て帰宅した。結局吐くことはなく今は健康体なのだけど、肉の油に慣れない人間がいきなり焼き肉を食べすぎるとよくないよ、という教訓でした。だからいきなりステーキ(原義)ってあまりよくない気がする。

 

 なんだかんだ充実した一日だったと感じる。外出した休日も久方ぶりだったが、やはり面倒さを振り払って外に出るといいのかもしれない。おやすみなさい。

 

おいしかったです。