nikki_20250303「阿部共実『月曜日の友達』など」

 

年末年始くらいで読んでいたものです

 

 

阿部共実『月曜日の友達』

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この方の作品を初めて読んだ。ほかの情報から暗い話なのかと思っていたけど、ぜんぜんそうじゃなくてむしろ眩しすぎるほど。狭い世界で周りを気にしてしまうような中学生の繊細さ、純粋な感情、それらゆえの素直になれなさが独特の硬めな文体で綴られている。中学生がこんな喋り方するか?と思うようなシーンもあるが、それがむしろ個性的でよい。

 

具体的なシーンだと、水谷が月野との約束を火木へうっかりしゃべってしまった、そのことを月野にしゃべってしまうところとか、それくらい隠しときゃいいのにと思う嘘を付けない素直さがあるように思った。あとは2巻の土森さんが水谷をなぐさめるところも好き。全体的に中学生の妹がいるのでなんかぐっときた。

 

超常現象が直接的に登場人物の問題に介入して解決するのではなく、あくまで解決するのは本人で後押しするだけ、という構図は好きだなと思う。でもこれを読んでむしろそういう作品のほうが多かったりするのか?と思った。超常現象がなんでも解決したらつまらないし……。ここで出てくるファンタジー要素は夜中に学校で机を並べる儀式とか謎の球を投げるとか超能力や幽霊だけど、それが日常の風景とかと同じく登場人物たちの心情を支えるようなものとしてだけ描かれているのがよい。

 

Twitterピクシブのイラストで存じてるだけでは分からなかったけど、モノクロで見て漫画が上手いと思った。人物の書き込みはシンプルだけど背景の書き込みは緻密という基本があって、背景が空白になることでシンプルさから人物が際立ったり、ここぞというときにまつ毛とかの書き込みが増えたり立体感のある構図が出てきて印象深くなる。背景が空白になる演出はたくさんあったけど、それらを繰り返したあとで最後の方に火木の兄の幽霊がでてくるところとかよい。空白に意味が見えてくる感じ……

 

amazarashiがこれのテーマを書いてるのも納得がいくというか、私は一切通っていないのだけど中学の時に周りの同級生は東京喰種で一通り通ってたみたいなイメージがある。そしてこれは偏見だけど彼らは思春期に知るからこそハマれるみたいなイメージがある。中学生の心理を描いたこの作品を彼らが手掛けたのは適任な気がする。

 

あと舞台のモデルが神戸あたりらしく調べて初めてたしかに!と思った。『潮が舞い子が舞い』も読みたいです。

 

熊倉献『春と盆暗 新装版』

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『ブランクスペース』を読み、ずっと気になっていたところで新装版が出ていたので読む。ちょっと変わった女の子に翻弄される男の子が出てくる話ばかりの短編集で、読みかけなんだけど『夜は短し歩けよ乙女』とかこんな話だったりするのかな? どの話もこんな女の子そうそういるわけ……みたいな気持ちであった。しかしそういう人に振り回されたい願望は私にもあるし萌えるのは萌える。

 

変わった女の子たちの変さはそうなんだけど、その変さは現実と折り合いをつけて生き延びるための彼女たちなりのやり方っぽいところは好きだった。冒頭の「月面と眼窩」とか特にそれが分かりやすいかもしれない。変なものとして描かれるけど、こういうところって自分達にもあるよなとしみじみする感じの話って好きなので。

 

女の子の変なところもあるけど「甘党たちの荒野」みたいに主人公がちょっと変な話もある。そうして奇妙なモチーフの組み合わせが度々登場して、複数の筋が交錯していくのはストーリーを作るのがうまいと感じる。主人公の中の(平凡な/変な)世界と女の子の中の変な世界があって、それらがある一点で奇妙に結びついて小さく光るみたいな……。個々の話だと「仙人掌使いの弟子」はよかったというか学内の出来事と学外の出来事が交互に描かれて、ボーイミーツガールかと思ったらガールが結構変なのが分かってボーイミーツボーイへ帰着するみたいな先の読めないちょっと意外なおかしさがよかった。

 

見富拓哉『人類は衰退しました のんびりした報告』

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2年くらい前におすすめされていた漫画。電子もあるのだけど見富氏の同人誌をいくつか紙でそろえていたこともありこれも紙で手に入れたく、ブックオフなどに行くたび探していたが見つからず、オンラインで古本を買ったので読んだ。また先日お店でエロゲを見ていたら田中ロミオという名前を何回も見かけて既視感があったのだけど、これだった。原作の人なのね。

 

原作が分からなくても読めると聞いて読んだ通りミリしらだけど、人類が衰退した世界で小人みたいな妖精さんが生活しているという話らしい。設定を引き継いでこの見富氏がオリジナルで紡いだ話なのでたしかに問題なく、ショートショートみたいな話が6つ。短編集なのに全部合わせて短編ひとつを読んだくらいの読後感で、登場人物も人間は3人しかいなくてミニマルである。巻末の田中氏のコメントでは「独創的な、作風、センス、間、満足です」とだけ評されておりあっさりすぎるよ!と思ったが、そんな感じで密度は低い。あとカバーに穴が開いていたり装丁は凝っている。

 

人類がほぼいない世界で暮らす新しい人類たち(妖精さん)を観察する機関の女の子が主人公で、妖精さんが旧文化を引き継ぎつつ新しい文化を作っているのを見ていく話。見富氏の簡潔な絵柄がこの小人の造形にあっていると思う。かわいい。一方で描かれる衰退した風景は簡潔な絵柄と余白の多さだからこその寂しさがあり、最後の数ページがそんな風景たちの見開きでいきなり終わったのはびっくりした。もちろん私が好みだった話は「報告Ⅱ 虹の円盤」で、CDという時代の遺物を主人公が見つけて聴く……というだけなんだけど、そこから音楽と記憶について想像をめぐらすモノローグはやっぱり好きだし、あと暗い空と海岸線からは同作者の短編「うっかり寝すごして月へ 」 あたりを思い出してよかった。

 

>鳴り止んでしまってもう聴くことのできない音楽と、そのそばによりそっていた名前も知らない人たちの暮らしのことを……